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「日本の最大の武器はクリエイティブだ」三浦崇宏が語るポストコロナ時代の仕事術

2020/10/30
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組織や仕事のやり方そのものもアップデートしていく

 2番目は朝令暮改力です。テクノロジーが矢継ぎ早に変化する時代です。UIが変わってもっと便利になった、もっとスピードが速くなったと、ソフトウェアが日進月歩でアップデートするように、組織や仕事のやり方そのものもアップデートしていったほうがいい。一度決めたことだからと固定化する必要は全くない、次の常識はもうわからないのだから。

「失われた30年」デフレが続いたあとにコロナ禍が直撃し、いまわれわれの答えが出てない中で、なにか1個ビジネスの仮説が出たらすぐに検証して、ダメだったらすぐ方針を変えてアップデートし続ける――つまり、システムや思考のフォーマットを朝令暮改で改善し続ける勇気が必要不可欠なんです。

 

「気持ちが動かないと人は買わない」というシンプルな真理

――確かに、「これは社内ルールだから、慣習だから」と固定化した思考法のままではこの時代に対応できないですね。

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三浦 そうです。そして3つ目は人間中心に立ち返ること。論理と効率の先にある人間の感情で物事は動きます。商品でもサービスでもビジネスの取り引きでもすべてがそうです。IT、テクノロジー中心の時代でも、システム的には有益だけどそれだとなんとなく人は楽しくないな、理屈的には正しいけど心地よくないな、みたいなことではやっぱり現実は動かせない。マーケティング戦略の4P分析とか、ビジネスの理論はいろいろありますが、一番シンプルな真理は「気持ちが動かないと人は買わない」ということ。この人間のもつ普遍的な感情にふれて心をゆり動かすのがクリエイティブの力です。

 あらゆるものがコモディティ化した飽和状態の市場において、論理的にはこうだよね、効率で考えたらこうするという答えに対して、個の強い感情を起点に「意味のある非効率」を貫いたクリエイティブな商品やサービスが、結果的に多くの人の心を動かすものになる。

 これまでのマーケティングではWhat(何を)とHow(どうやって)売るかばかりが語られてきましたが、実は本当に重要なのはWhy(なぜ売るのか)であり、Where(どこで売るか)。なぜそれをやるのか、そもそもこれは社会にとってどんな価値があるのかという本質を突き詰めることが新しい価値を生むことにつながります。

 

 また、同じプロダクトでもどこで戦うのかのWhereがますます重要になってきます。たとえば僕の新刊がタレント本の棚に置かれていたら、「誰だ、このデブ?」ですが(笑)、ビジネス書のコーナーなら新しい仕事本として面白がってもらえる。どこで勝負をするかは意外に見落としやすいポイントです。

 結局のところ、表面的なHowではなく、人間の普遍的な感情にフォーカスしたクリエイティブな力こそが仕事の突破口となります。クリエイティブとは、非常に汎用性の高い思考法と実装の技術で、業種を問わず、すべての人の仕事をアップデートするものになるでしょう。