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選手会がそう考えて2019年に提案したのが現役ドラフト(ブレイクスルードラフト)だった。詳しくは第3章で述べるが、「出場機会を与えられないまま2軍で燻ったままの選手が、チャンスを得られるような制度をつくってほしい」という趣旨での提案は、球団側から骨抜きにされようとしている。2020年1月にNPBが選手会に逆提案した内容を見ると、対象とする選手を「戦力外通告の当落線上にいるような者」と限定したのである。クビになりそうな選手を他球団に移すだけでは、わざわざ新制度を導入する意味は薄い。それでは現役ドラフトの本来の意義が大きく損なわれかねない。
現役ドラフトでFA制度の過ちを二度と繰り返さないために
「完成形ではなく、やってみていろいろ調節する部分が出てきてもいい」
選手会長の炭谷銀仁朗(すみたにぎんじろう・巨人)は前年12月にそう話したが(2019年12月6日付の産経新聞電子版より)、条件を妥協して導入を決めてしまえば、FA制度と同じ末路をたどりかねない。NPBのように旧態依然とした組織では、一度決められた制度を抜本的に修正するのは極めて難しいからだ。FA制度が「使いにくい」まま運用されつづけていることが、何よりの証左だろう。
同じ過ちを二度と繰り返さないためには、過去の検証が不可欠だ。選手たちが自由に球団を選ぶことができ、今より輝くことを見据えて導入が検討されたはずのFA制度は、なぜ、こんなにも球団有利に設計されるに至ったのだろうか。
その顛末を振り返ることは、未来のプロ野球にとって、大きな意義を持つはずである。