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A級順位戦でトップを走る斎藤慎太郎八段 初参加での快挙達成なるか

A級順位戦でトップを走る斎藤慎太郎八段 初参加での快挙達成なるか

「A級順位戦は遠くて特別な場所という印象でした」

2020/10/30
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昇級組54名の棋士はどのような成績を残したか

 山田以降に初参加のA級で挑戦権を得たのは第36期の森雞二、第41期の谷川浩司(名人奪取)、第52期の羽生善治(名人奪取)、第53期の森下卓、第54期の森内俊之、第74期の佐藤天彦(名人奪取)、第75期の稲葉陽の7名がいるが、みな似たような心境だったのではないだろうか。

2016年2月27日、A級順位戦最終局で、初参加にして名人挑戦を決めた佐藤天彦八段(当時) ©相崎修司

 改めて、羽生善治九段がA級に初参加した第52期から昨年度の第78期まで、B級1組からの昇級を決めたばかりの54名の棋士がどのような成績を残したか見てみよう。

◎は挑戦権を獲得し名人奪取、○は挑戦権を獲得するも奪取ならず、△は勝ち越し、▲は負け越し、●は降級。★はA級初参加者
第52期 ★羽生善治◎、加藤一二三▲
第53期 ★島朗▲、★森下卓○
第54期 ★森内俊之○、★村山聖▲
第55期 ★佐藤康光△、森雞二●
第56期 高橋道雄●、★井上慶太△
第57期 ★丸山忠久△、村山聖・リーグ開始前に逝去
第58期 ★郷田真隆●、田中寅彦▲
第59期 青野照市△、★先崎学▲
第60期 ★藤井猛▲、★三浦弘行▲
第61期 島朗▲、郷田真隆●
第62期 ★久保利明▲、★鈴木大介△
第63期 ★深浦康市●、高橋道雄●
第64期 森下卓●、郷田真隆△
第65期 深浦康市●、★阿部隆●
第66期 ★木村一基△、★行方尚史●
第67期 鈴木大介●、深浦康市●
第68期 高橋道雄△、井上慶太●
第69期 ★渡辺明△、久保利明▲
第70期 佐藤康光▲、★屋敷伸之△
第71期 ★橋本崇載●、深浦康市▲
第72期 行方尚史△、久保利明▲
第73期 ★広瀬章人△、★阿久津主税●
第74期 ★佐藤天彦◎、屋敷伸之△
第75期 ★稲葉陽○、三浦弘行▲
第76期 久保利明△、★豊島将之△
第77期 ★糸谷哲郎△、阿久津主税●
第78期 渡辺明◎、木村一基●

2010年9月22日、初のA級順位戦で戦う渡辺明竜王(当時)。対戦相手の久保利明九段もこの年にA級へ復帰していた ©相崎修司

20代の新A級が2名そろうのは久保利明・鈴木大介以来

 名人挑戦が6名であるのに対し、B級1組へのUターンを余儀なくされた棋士は17名。勝ち越せた棋士ですら16名(挑戦者を含むと22名)と、やはり「家賃の高さ」を思わせる。2名そろってB級1組に突き返された年も3回ある。

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 このうち、同星ながら頭ハネ降級を喫したのは第58、61期の郷田真隆、第63、65、67期の深浦康市、第64期の森下卓、第67期の鈴木大介、第68期の井上慶太、第71期の橋本崇載、第78期の木村一基。延べ人数にすると10名だ。そして4勝5敗ながら涙を呑んだのが第61期の郷田、第63、65期の深浦、第78期の木村である。

 一時期における郷田と深浦の入れ替わりの激しさをみると、実力では遥かにB級1組を超えているが、順位の壁に泣かされた悲哀がもろに現れている。だが、これが順位戦なのだ。

 今期の新A級は両名とも若いが、20代の新A級が2名そろうのは第62期の久保利明と鈴木大介以来のことになる。厳しい戦場に新風の嵐を巻き起こせるか。

 斎藤八段に後半戦に向けた抱負を語ってもらった。

「開幕までは緊張や不安もありましたが、対局が始まれば普段の公式戦と変わらないですし、A級順位戦ということを意識しすぎず臨めているのが良い方に出ているのかなと感じます。今後も一局一局に集中して、良いところを出せるように頑張っていこうと考えています」

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