「地域じゃなきゃ味わえない味もなきゃ」
「もちろんよ。元気元気。この前もテレビの取材でジョギングについてきたカメラが100mダッシュしたら付いてこれなくて『なんでこったらパワーがあるの?』って。それもキムチ納豆ラーメンのおかげさな。キムチ、納豆、味噌、生卵。もうばっちりばっちり。みんな身体にいいべ。
それに元気の源はやっぱりお客さんの前に立つこと。12月上旬に映画館通り(斜向かいの通り)に新店ができるし『やめろ』と言われてもやめらんねえ。
こっからの人生の再出発。期待してんだよ。俺がこの先、45年積み重ねてきたものを、全国から来てくれるお客さんに対して、どう発信してけるか。東京さ店出すのもいいが、地域じゃなきゃ味わえない味もなきゃ地元がダメになる。そういうやる気が湧くうちは青春よ。せっかくこの世に生まれたなら世の中に必要とされる仕事をしてぇし。最後は厨房で鍋ふりながら死ぬのが一番の本望だって」
――いよいよ柳家本店、卒業の時が来ました。最後に会長からお客様へお言葉をお願いできますでしょうか。
「思いはいっぱいあるけど、結局、人じゃ。うちの自家製の麺は長男が自衛隊辞めて10年前から『親父と一緒に』って。畑で小麦を作ってんだ。頭下がるじゃ。次男も今は店を継いでくれとるし、長女も俺の周りにいて、おかみさんもいて、孫もいて。柳家で仕事する人もそう。そして、柳家を大事にしてくれた皆さんがいてくれる。
俺には1万円も10万円も財産ないし、不動産もねぇんだけど、明日死しても悔いないっていう最高の人生なのさ。ラーメン屋って金儲けたい金儲けたい、言ったってさ、絶対儲からねぇのよ。やっぱり、お客さんのためにやらねばねぇっつうことで、やっとお客さんは来てくれるようにできてる。80年近く生きてきて、45年ラーメン屋やって、つくづく教わったな。やっぱ人生金じゃねぇわ。やっぱ人だな~、人間ぐれぇ素晴らしいのはねぇよ」
――ありがとうございました。以上、柳家会長から皆さまへ旅立ちの祝辞でした。