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「やっぱ人生金じゃねぇわ」岩手“キムチ納豆ラーメン“を生んだ「柳家本店」が閉店 79歳創業者の「卒業の言葉」

2020/11/03
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「地域じゃなきゃ味わえない味もなきゃ」

「もちろんよ。元気元気。この前もテレビの取材でジョギングについてきたカメラが100mダッシュしたら付いてこれなくて『なんでこったらパワーがあるの?』って。それもキムチ納豆ラーメンのおかげさな。キムチ、納豆、味噌、生卵。もうばっちりばっちり。みんな身体にいいべ。

生卵に納豆、味噌にキムチ。「もうばっちり」とは大信田氏談(筆者撮影)
こだわりは原材料から(筆者撮影)

 それに元気の源はやっぱりお客さんの前に立つこと。12月上旬に映画館通り(斜向かいの通り)に新店ができるし『やめろ』と言われてもやめらんねえ。

 こっからの人生の再出発。期待してんだよ。俺がこの先、45年積み重ねてきたものを、全国から来てくれるお客さんに対して、どう発信してけるか。東京さ店出すのもいいが、地域じゃなきゃ味わえない味もなきゃ地元がダメになる。そういうやる気が湧くうちは青春よ。せっかくこの世に生まれたなら世の中に必要とされる仕事をしてぇし。最後は厨房で鍋ふりながら死ぬのが一番の本望だって」

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――いよいよ柳家本店、卒業の時が来ました。最後に会長からお客様へお言葉をお願いできますでしょうか。

「思いはいっぱいあるけど、結局、人じゃ。うちの自家製の麺は長男が自衛隊辞めて10年前から『親父と一緒に』って。畑で小麦を作ってんだ。頭下がるじゃ。次男も今は店を継いでくれとるし、長女も俺の周りにいて、おかみさんもいて、孫もいて。柳家で仕事する人もそう。そして、柳家を大事にしてくれた皆さんがいてくれる。

麺も自家製。家族ぐるみでラーメンを作ってきた(筆者撮影)

 俺には1万円も10万円も財産ないし、不動産もねぇんだけど、明日死しても悔いないっていう最高の人生なのさ。ラーメン屋って金儲けたい金儲けたい、言ったってさ、絶対儲からねぇのよ。やっぱり、お客さんのためにやらねばねぇっつうことで、やっとお客さんは来てくれるようにできてる。80年近く生きてきて、45年ラーメン屋やって、つくづく教わったな。やっぱ人生金じゃねぇわ。やっぱ人だな~、人間ぐれぇ素晴らしいのはねぇよ」

「ラーメン屋は絶対儲からねぇよ」と笑う大信田氏。11月3日、本店は45年の歴史に終止符を打つ(筆者撮影)

――ありがとうございました。以上、柳家会長から皆さまへ旅立ちの祝辞でした。

「やっぱ人生金じゃねぇわ」岩手“キムチ納豆ラーメン“を生んだ「柳家本店」が閉店 79歳創業者の「卒業の言葉」

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