1ページ目から読む
2/3ページ目
日本を支配しようとした男の末路
さすがに、これには抵抗しきれなくなって、力を込めて腰を引いたくの字からの反動で、前にのめり出すように引き立たされる。それでも両足を前に踏ん張るようにして、証言台の前に移動することに対抗する。
「はい、じゃ、被告人はちゃんとそこに立ちなさい」
小川裁判長がもう一度言った。
これに抗う教祖。
いやだ! そこには行きたくない! 言わせなきゃ済むんだ! とばかりの幼稚な発想が透けて見える。
こんなに精一杯の抵抗を示したのは、はじめてだった。いつもは、刑務官の指図になすがままに従っていたはずだった。
なんのことはない。この男、現実をちゃんと把握できていたのだ。
それで、こんなに嫌がってみせるのだ。
これが、死をも超越したと自負する最終解脱者の正体だった。
日本を支配しようとした男の末路だった。
あからさまな感情表現に、芸達者の側面も色褪せて消えていく。
死刑を怖がる男の本性を、むき出しにしていた。
それでも、多勢に無勢、刑務官に取り囲まれ、瞬く間に証言台の前に引きずり出される。
一瞬の抵抗も虚しく、さすがに被告人も観念したのか、証言台の前に自分がいることを察知すると、身体の力を抜き、呆然とそこに立ち尽くした。