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日本を支配しようとした男の末路

 さすがに、これには抵抗しきれなくなって、力を込めて腰を引いたくの字からの反動で、前にのめり出すように引き立たされる。それでも両足を前に踏ん張るようにして、証言台の前に移動することに対抗する。

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「はい、じゃ、被告人はちゃんとそこに立ちなさい」

 小川裁判長がもう一度言った。

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 これに抗う教祖。

 いやだ!   そこには行きたくない!   言わせなきゃ済むんだ!   とばかりの幼稚な発想が透けて見える。

 こんなに精一杯の抵抗を示したのは、はじめてだった。いつもは、刑務官の指図になすがままに従っていたはずだった。

 なんのことはない。この男、現実をちゃんと把握できていたのだ。

 それで、こんなに嫌がってみせるのだ。

 これが、死をも超越したと自負する最終解脱者の正体だった。

 日本を支配しようとした男の末路だった。

 あからさまな感情表現に、芸達者の側面も色褪せて消えていく。

 死刑を怖がる男の本性を、むき出しにしていた。

 それでも、多勢に無勢、刑務官に取り囲まれ、瞬く間に証言台の前に引きずり出される。

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 一瞬の抵抗も虚しく、さすがに被告人も観念したのか、証言台の前に自分がいることを察知すると、身体の力を抜き、呆然とそこに立ち尽くした。