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2020/11/10

Q2 バイデン政権は中国寄りになるのか?

 先に紹介した論文には、中国に対しては知的財産を奪われ続ける現状について警鐘を鳴らし、中国の政治弾圧や人権侵害に対して、同盟国と共に解決にあたるという記述もある。

 しかし、トランプと比べると中国に対するトーンの弱さは明らかだ。

 2016年大統領選挙で表面化したロシアゲート事件を踏まえて、ロシアのほうを明確に敵として認定している。中国の共産党一党独裁体制には触れていないにもかかわらず、プーチン政権の権威主義体制には批判的なのだ。冷戦時代の外交政策を見ているかのようである。

オバマ時代に逆戻りはしない? ©️JMPA

 中国がアメリカを超えて覇権を握ろうとしていることを認識しており、バイデンもオバマ時代とは異なることを認めている。だが、バイデンの外交政策の中心はヨーロッパであり、中国に対しては関係を深め、アメリカ型民主主義を浸透させることで新たな関係構築が可能だというポスト冷戦時代の考えだ。中国がまだ経済成長を遂げる以前の楽観主義である。

Q3 日本についてはどう考えているのか?

 冒頭に挙げた公約集で、日本に関する記述は1か所だけ。

「日本、韓国、オーストラリア、その他のアジアの民主主義国との同盟関係を強化し、イスラエルの安全保障への鉄壁のコミットメントを維持する」

 同盟国の1つとして、日本の名前が列挙されたにすぎない。

 以前から、アメリカの政権が変わるたびに「中国が尖閣諸島に侵入したら日米安保は発動されますか?」と、日米関係者は確認していた。バイデンの外交政策を読み進めると、バイデン政権下では「我が国の施政の下にある領域への武力攻撃に対して日米が共同で対処する」と定めた日米安保条約5条が着実に発動されるのか不安が残る。

尖閣諸島に有事があったら、バイデン政権はどう動くのか ©️文藝春秋

 ポスト冷戦時代の民主党政権は徹底して対中投資を増やした。中国の市場を重視すぎるあまり、「ジャパン・パッシング」が進んだ。バイデン政権は、その時代に戻る可能性がある。雇用重視の姿勢はトランプと同じであるが、対中関係の構築には楽観的であるため、日本の領土問題にコミットしない可能性を想定しておくべきだろう。

 共和党系と異なり、民主党系の北朝鮮に対する関心は薄いため、アメリカの協力を得ての拉致交渉も望めない。バイデン政権が誕生すれば、日本の外交政策は大転換を余儀なくされると考えられる。

大統領選前日の11月2日、ペンシルベニア州で演説するバイデン前副大統領 ©️getty

 ただし、バイデン政権にはオバマ政権を支えた知日派の専門家も多く起用されると考えられるため、政府高官レベルでの連携は取りやすくなるという利点はある。