Q4 経済政策において、トランプ政権との違いは?
バイデンは「Buy American」の主張に合わせて、アメリカ製品の購入を促進するために4000億ドルの予算を投入すると公約に掲げている。
また、上院議員時代、「雇用の海外流出に繋がる」と批判を浴びたNAFTAを支持した反省もあってか、アメリカ製の素材やサービス、研究・技術開発にも3000億ドルの予算を投じる構えだ。
その財源として、トランプ減税で引き下げられた法人税は21%から28%に引き上げ、個人の所得税の最高税率も引き上げ、アマゾンやアップルなどへの大企業への課税を強化するとしている。
トランプは富裕層や企業に対する税制優遇で雇用の維持と賃金アップを促進するという姿勢だったのに対し、バイデンは富裕層や企業への増税により低所得者や中間層への再分配を目指しているのだ。
さらにバイデンは、グリーン・エネルギーやヘルスケア、介護、教育分野への投資推進を目指している。トランプが離脱を決定したパリ協定への即時復帰を明言している。
トランプが保護貿易主義だったのに対し、バイデンは関税引き上げの弊害を批判してきた。保護貿易ではなく、外国との貿易を促進することでアメリカ国内の雇用を増やすとしているのだ。とはいえ、中国主導でなく、アメリカがリーダーシップを発揮して国際ルールづくりを進めることで、それを実現するというスタンスとなるだろう。
アメリカの労働者の仕事が確保できないままであれば、新しい貿易協定に合意しないと強調している。これは、オバマ政権時代に交渉を進めたTPPへの参加を指していると考えられる。
総合して見ると、経済政策ではアプローチの仕方と資金の投入先はトランプ政権と異なるが、雇用創出、所得の引き上げ、国内生産の促進、中国依存の脱却などの共通点がある。
※本稿は横江公美氏の著書『隠れトランプのアメリカ』を再編集したものです。
![](https://bunshun.ismcdn.jp/common/images/common/blank.gif)