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 実際に「鬼嫁エピソードはありませんか?」とのオファーは何度かあったが、全てお断りさせていただいた。だって本当にないから。

 そもそも芸人に愛妻家というイメージがつくことはさほどプラスにならない。僕の能力不足の面はさておき、ヒールぶったってなりきれないし、どんなにトガったことを発言しても「どうせ」がついて回る。が、別にそれでも構わない。

ステレオタイプな“夫婦像”にとらわれる必要はない

 芸人と聞くと、どこか荒々しい、ロックテイストなイメージがあると思う。そういった芸人に強い憧れを抱いていたが、そちら側の巧者はほかに山ほどおり、同じルートを登っていても僕じゃ上には登れまい。ならば家庭的でポジティブ・シンキングな方向から山を登ればいい。

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 過ぎたるものは全てボケになる。ならば仲良しすぎることもボケになり得る。本当に嫁への愛が振り切れているのだからこのままでいい。「芸人らしさ」を問われる側面もあるだろうが、40歳をすぎた今、変に取り繕う必要もないだろう。

 それに、3章で書いたように、あまりにも悪すぎる世の中の結婚へのイメージを払拭したかった。「数年もしたら飽きる」「結婚生活は地獄だ」。もちろん相性はあるから、こう感じてしまう夫婦はいるだろうし、その結果、離婚という選択肢を選ぶことも責められない。

 僕が耐えられないのは、本来仲良く過ごせていたはずの夫婦が、こうした勝手なイメージに呑み込まれてしまうことだ。

©iStock.com

 結婚というものは人生において大きなイベントだ。多くの人々を巻き込み、二人が一つの家族になる。それゆえに、夫婦の不仲は二人のみならず多くの大切な人を傷つけてしまう可能性があるのだ。

今日も僕は、嫁を口説き続ける

 だからこそ僕は多くの人に伝えていきたい。結婚はこの世の楽園で、夫婦は一生の恋愛相手であることを。こうした感覚が世界中でスタンダードになり、僕の「仲良しボケ」が、ただの「結婚あるある」になることを願ってやまない。

 愛のインフルエンサーに休息のときはない。

 だから今日も僕は、嫁を口説き続ける。

今日も嫁を口説こうか

祐希, 平子

扶桑社

2020年10月28日 発売