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これで死刑でないのはおかしい

 被告人も、よもや手紙が証拠として挙がってくるとは思ってもいなかったのだろう。それも、腹のうちを明かせると思っていた数少ない友人に宛てたはずのものだった。

 それでも、被告人は事実関係に争う姿勢を見せず、反省の弁を述べ、繰り返し情状面を主張。その上で、二審も元少年を無期懲役としたのだった。

 おそらくこの時点で被告人もほっとしたことだろう。勝った、負けた、はともかく、身から出た錆とでも言うべき難局を乗り切ったのだ。まずは形勢を取り戻して、命拾いしたことに安堵したはずだった。

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 ところが、この判決を不服として検察が上告した最高裁判所で、また事態は一転する。

 これで死刑でないのはおかしい、と最高裁が言い出したのだった。

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「死刑を選択しない事由として十分な理由に当たると認めることはできない」として、高等裁判所に差し戻す。つまり、死刑を回避できるだけの特に酌量すべき事情があるか、もっとよく審理をしなさい、と突き返したのだ。

 再び、死刑の瀬戸際に立ち戻ることを余儀無くされた裁判。広島高裁での差し戻し控訴審。

 そこで少年は、それまでの主張を一転させる。

 ぼくは、この時から“元少年”と呼ばれた被告人の姿を見てきた。