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『犬がある日かわいい犬と出合った。そのまま「やっちゃった」』 光市母子殺害、犯人の“偽りの反省”

『私が見た21の死刑判決』より#9

2020/11/28

source : 文春新書

genre : エンタメ, 社会, 読書

note

レイプ目的と殺意の否定

 とにかく抗うこと、抵抗姿勢を示す。そして、今回のような大きな事件となれば、徒党のように大きな弁護団を結成する。法廷に数の威力でデモンストレーションしてみせるパターンが定着していた。

 それでも、法廷で彼の顔を見るのも久々だった。

 麻原裁判が継続中の98年12月に、この主任弁護人が逮捕されていた。逮捕容疑は強制執行妨害。自分が顧問弁護士をつとめる不動産会社の差し押えを逃れようと、会社所有のビルのテナント料をダミー会社に移して誤魔化す指示をしたというのだ。それも、裁判所の差し押えだったという。

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 最後に弁護士の姿を見たのは、彼の初公判のときだった。麻原が裁かれるのと同じ、東京地裁第104号法廷。いままで麻原が座っていた場所に、手錠をして連れてこられた姿を見た時は、悪い夢を見ているようだった。

©iStock.com

 それ以来、麻原裁判にも姿を見せず、自分の裁判への対応で、それどころではなかったらしい。

 結局、彼の裁判は一審で無罪となる。

 再び弁護士としての活動を再開したところで、世に知られた死刑反対運動家のもとに、この手の事件が舞い込んできたのだった。

 そこで、これまでの少年の主張を一変。弁護団があらためて主張したことといえば、レイプ目的と殺意をすべて否定したことだった。

私が見た21の死刑判決 (文春新書)

青沼 陽一郎

文藝春秋

2009年7月20日 発売

『犬がある日かわいい犬と出合った。そのまま「やっちゃった」』 光市母子殺害、犯人の“偽りの反省”

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