「お祖父ちゃんの店を守りたかった」で100年続く銀座の名店
もちろん、『萬福』『春木屋』『大勝軒』……。幸いにして後継ぎに恵まれ、半世紀以上にわたり愛されているラーメン店が東京にはある。
たとえば、1926(大正末)年に屋台として創業、三代にわたりおよそ100年近く暖簾を掲げる東京屈指の老舗『萬福』。銀座の片隅で厨房に立つのは三代目店主の久保英恭(ひでひさ)さん。創業者である笠原福次郎さんの孫である久保さんは、幼少期より店を手伝いながら、中華料理店などでの修業を経て、25歳の時にこの店を受け継いだが、それは自然なことだったと語る。
「商家の子供は店を手伝うのが当たり前って時代でしたから。自分は最初船乗りになりたいという夢があったのですが、やはりお祖父ちゃんの店を守りたいという思いがあって、25歳の時に店を継ぎました。料理をすることも好きでしたし、高校時代からお店の仕込みから何から実質的には僕の仕事でしたから、自然な流れで継ぐことになりました」
「失われた」伝説の浅草ラーメン“奇跡の再生”
また、一度失われた味を再生する挑戦が奇跡的に実を結んだ例もある。
1910(明治43)年、浅草に創業した『來々軒』は、醤油ラーメンの元祖であり、日本のラーメン店の原点とも言われる歴史的名店である。しかしながら、後継ぎがいないことから1976(昭和51)年に廃業した。今から100年以上前にラーメンブームを興した味は、二度と味わうことは出来ずにいた。
そんな中、長年調査や研究を重ねてきた『新横浜ラーメン博物館』が、創業者の末裔や同じ醤油ラーメンの人気店『支那そばや』の協力も得ながら、創業当時の味を復元することに成功した。3年間という期間限定ではあるが、伝説の味をまた楽しめる様になったのは、ラーメンという食文化にとって朗報だ。
復活した『淺草 來々軒』の店長で、調理を担当した『支那そばや』の松野下丈児さんは「当時の食べた人の気持ちを想像しながら作り、色々な年代の人がまた食べたくなる様な味にしようと思いました」と語る。