下腹部からの異臭
押さえ付けていたら、抵抗がなくなった被害者。しかし、気を失っただけかもしれない。あるいは、そうしたフリをして、隙をみて反撃に出るかもしれない。そう思った被告人は、横たわる被害者の脇に座って、
「両手をガムテープでグルグル巻きにしています」
「巻いたあと、口にもガムテープを貼っています」
それから、被害者が目覚める、あるいは気絶の振りを解くのではないかと思って、まずはトイレから持ち出したスプレー式のものを顔の前に掲げて噴霧する素振りをする。しかし反応はない。次に作業着の胸ポケットにあったカッターを顔の前に振り翳し、着ていたセーターと肌着を乳房のあたりまでたくしあげる。
「当時、羞恥心という言葉は知りませんでしたが、恥ずかしいと身動きをするのではと思って、たくしあげました」
しかし、反応はない。そこで肌着にカッターで切り込みを入れ左右に引きちぎる。反応はない。そして次にブラジャーに手をかけ、中央をカッターで切り開く。その挙句に、
「ぼくの右手で左の乳房を触り、右を口で吸ったりしています」
それから、下腹部からの異臭に気付く。
「ウンチの異臭ですね」
「ぼくは、そのことが信じられない、殺す気はない、なんでこうなったのか、確認しようと」して、穿いていたジーパンを下にずらし、見えたパンティーをカッターで切り開く。するとそこに汚物が確認できた。
「母親が自殺して亡くなった状態と酷似していて、母が亡くなった状態と重なり、うめき声をあげてそこに立ち上がってます」
そして、このあとだった。
「廊下に弥生さんの幽霊を目撃いたした次第であります」
これが、ドラえもんや小説への伏線だった。