団塊世代、新人類、バブル世代、氷河期世代、ゆとり世代……いつの時代も若者は総体の特徴をもって○○世代と名付けられてきた。現代の若者は「Z世代」と呼ばれ、マーケティング業界を中心にその特徴がさまざまな場所で論じられている。

しかし、多様性を重視する社会に生きる彼らの特徴を同定することはこれまで以上に難しい。ここでは、“若者”についての研究を20年以上にわたって続ける原田陽平氏の著書『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』を引用し、Z世代の世代的特徴の一面に触れる。

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「間接自慢」

 2019年の上半期に、Z世代の間で最も流行ったカテゴリーは、「診断シェア」です。

 私の造語である「診断シェア」の説明をする前に、まず、これまた私の造語である「間接自慢」の説明をしましょう。なぜなら、「間接自慢」のうちの一つの手法が、この「診断シェア」だからです。

「間接自慢」とは、直接的、ストレートに他人に自慢するのではなく、間接的、婉曲的に他人に自慢したいという欲求や、間接的に自慢する行為のことを指します。

 前章で「新村社会」について触れましたが、リアルでもSNS上でも、直接的で露骨な自慢をすると、噂や陰口が広がりやすく、周りから煙たがられてしまうので、それを避けるために「間接自慢」という手法が生まれました。「診断シェア」は、その進化版です。

「間接自慢」の具体例をご説明します。

 例えば、あるOLさんが、「東京出張行って来ました」という書き込みとともに、東京―高崎間の新幹線のチケットの写真を撮ってインスタグラムに投稿したとします。その投稿で彼女が言いたいのは東京出張の事実。だから、彼女はチケットを接写した写真を投稿すればいいはずですが、彼女が投稿した写真は、なぜか引きの絵で撮られており、端っこの方にマイケル・コースのブランドの財布が写り込んでいる――。

©iStock.com

 このOLさんが周りに本当に見せたいのは、東京出張の事実ではなく、実はマイケル・コースの新作のお財布なのです。でも、その財布を接写して、その写真とともに「新しい財布買いました。可愛いでしょう?」というコメントを投稿したら、「新村社会」では村八分にされかねません。

 よって、本音では新しく買ったマイケル・コースの財布を自慢したいものの、それを東京出張というオブラートで包み、間接的・婉曲的に新しく買った財布の自慢をしているのです。こうした行為を、私は「間接自慢」と命名しました。