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「赤ちゃん顔の私も可愛いでしょ…」承認欲求を満たす“間接自慢”がやめられない若者たち

『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』より #2

2020/11/20
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あざとさへの非難

 ミスコンにエントリーしている彼女がSNSに載せたある写真が賛否両論、「可愛すぎる」という「賛」と、「あざとすぎる」という「否」の意見で真っ二つに分かれ、炎上しました。

 その写真とは、彼女がスタバ店内で、抹茶系の飲み物を右手に持ち、コーヒー系の飲み物を左手に持ち、ニコッと笑っている写真なのですが、実はそのコーヒー系の飲み物のプラスチックのコップから、コーヒーがちょろちょろ漏れているのです。目を凝らして見ないとまったく気づきません。

 この漏れに気づいた人々の間で、「天然で可愛い!」という意見と、「意図的にコーヒーまでこぼして、それに気づかない純粋さをアピールするなんてあざとすぎる!」という意見に分かれ、彼女は大炎上したのです。

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 彼女がこれを意図してやったのか、たまたまなったのかの真相は藪の中ですが、もし狙ってやったのだとしたら、「私ってコーヒーを垂らしても気づかないで笑顔で写真を撮ってしまうくらい天然で可愛いのよ」ということをアピールしたことになり、大変高度な「間接自慢」と言えます。

「間接自慢」と「診断シェア」

 こうした「間接自慢」の横行、それに対する批判が増える中、2019年上半期に、Z世代の間で、「間接自慢」の進化版、いわば炎上しない「間接自慢」が大変流行り、今でもその流行が続いています。それが「診断シェア」です。

©iStock.com

 これはアプリやサイトで自分のどこかを診断してもらい、その診断結果をSNS上に投稿し、周りにシェアすることで、「こんな診断結果が出るくらい私って○○らしいよ」ということを、間接的に自慢する行為のことを指します。

 例えば、19年上半期に流行った「恋愛免許証」と「性格免許証」というサイトがあります。これはプロフィール情報を入力すると、自分の恋愛傾向や性格が免許証のような形で表示される、というサービスです。

 二つのサービスとも、そんなにひどい恋愛傾向や性格は診断結果として出ません。例えば、「良い人だが、報われず友達止まり」(恋愛免許証)や、「万能でカリスマ性を帯びた天才」(性格免許証)といった診断結果が出ます。

 前者は、「報われず」と言いながらも、私は良い人で友達に向いているよ、ということを「間接自慢」できますし、後者は、直接自慢と言ってよいほど、全面的に褒められている内容ですが、あくまでそれは公正な診断結果であり、自分で直接自慢しているわけではない、という言い訳が成り立つので安心して自慢できるわけです。