トランプ米大統領との歴史的な大接戦の末、ジョー・バイデン前副大統領が勝利した。来るバイデン政権下で、超大国はどう生まれ変わるのか。

 日本をはじめ、海外の国々は、バイデン氏の安保外交政策に注目している。日本や韓国といった同盟国にはどのような態度で臨んでくるのか。特に、軍事的台頭が著しい中国と北朝鮮に対する政策がどうなるのかは、日本にとって最大の関心事だ。中国や北朝鮮も、新政権の閣僚を予想しながら、トランプ後のバイデン外交に戦々恐々としているはずだ。

基本は「同盟強化と国際協調主義」

 前提として、バイデン氏の安保外交政策の基本は、同盟強化と国際協調主義になるだろう。バイデン氏は、米外交誌「フォーリンアフェアーズ」2020年3月号掲載の論文「アメリカのリーダーシップと世界――トランプ後のアメリカ外交」で次のように書いている。

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「グローバルな脅威に対する集団行動を組織するための同盟国やパートナーとの協調を、私は外交政策上の最優先課題に掲げる」

バイデン氏 ©AFLO

 ここでいう「グローバルな脅威」とは何か。

 バイデン氏は論文内で、気候変動や核拡散、感染症などを列挙している。つまり、バイデン政権は国際協調主義の下、トランプ政権が脱退した地球温暖化対策のパリ協定やイラン核合意への復帰、WHO(世界保健機関)脱退の撤回を目指しているということだ。

オバマ政権の方針に立ち返ろうとしている

 また、バイデン氏が論文で使った「集団行動」という言葉はオバマ政権でも頻繁に使われたワードだ。オバマ大統領は、アメリカ一極主義ではなく、同盟国や友好国を結集して、国際協調主義の下で「集団行動」をとっていくことを表明していた。バイデン氏はその方針に立ち返ろうとしている。

 オバマ大統領は2013年に「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言した。バイデン氏も前述の「フォーリンアフェアーズ」で「アフガニスタンや中東での戦争、さらにはアルカイダやイスラム国勢力(ISIS)の打倒という限られたミッションのために派遣されている部隊の大半を引き揚げて、帰国させるべきだ。サウジが主導するイエメン戦争への支援も止めなければならない」と述べている。

 アメリカはもうどの政権になろうと、単独では国際秩序を維持できないということを認めている。特に、民主党政権は伝統的に、軍事支出拡大にも反対だ。