中国にはどう対峙する?
バイデン氏の対中政策は、日本の最大の関心事と言えよう。バイデン政権は、国際協調や人道主義を掲げながら、人権問題や領土紛争をめぐって中国の「戦狼外交」と言われる強硬外交と対峙していくことになる。
特に中国は、トランプ政権がコロナ禍に見舞われ、さらには大統領選で安保外交が手薄になる時期を狙い、その間隙を縫うようにして、香港や南シナ海、東シナ海、インドに至るまで、軍事的な存在感をぐっと強めてきた。
こうした現実を前に、バイデン政権は、トランプ政権も推進した「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の路線を継承していくことになろう。政権交代を受け、FOIPの名称が変わることはあるかもしれないが、考え方自体は維持されるだろう。
振り返れば、オバマ政権も、安全保障、外交、経済の重点をアジア太平洋地域に置く「アジア・リバランス(再均衡)」政策を掲げていた。しかし、そのリバランス戦略については、「大声で話して、小さなこん棒しか持たない」と批判されてきた。オバマ政権は中国に弱腰で、それが中国の南シナ海進出を加速させたとの批判も根強い。
オバマ時代の“対中融和路線”に回帰することはない
そのオバマ政権で国防次官を務めた、バイデン政権での国防長官の有力候補、ミシェル・フロノイ氏は、「フォーリン・アフェアーズ」2020年7月号掲載の論文で、「ワシントンはかつて約束したようにアジアに軸足を移してはいない」と指摘し、「同盟国やパートナーとより定期的に軍事演習を行い、すでに保有する軍事能力をみせつけ、新しい能力の整備を加速すべきだ」と述べている。
今のアメリカはオバマ政権時代よりも、ぐっと中国への警戒感が高まっている。それを受けて、共和党も民主党も党派を超えて、中国に対してタフな姿勢を見せている。
バイデン氏は、気候変動や核不拡散、感染症対策など世界共通のグローバルな課題では、中国との協調を模索しているが、だからといってオバマ政権のような対中融和路線に回帰することはないだろう。