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 けれども菅野は最後の最後まで復調しなかった。クライマックスシリーズを回避して、日本シリーズの第4戦でどうにか復帰登板を果たして試合の形は作ったものの、チームの勝利には貢献できなかった。彼が本来の調子であれば、登板すべき試合は第1戦であり、山口俊には申し訳ないが、彼は巨人の中では第2戦に投げるべきピッチャーなのである。それができなかったところに、巨人の弱い部分が露呈されたと言っていい。

誰が抜けても好循環 「季節労働者」のようなソフトバンク

江本氏

 もうひとつの理由は、ソフトバンクが日本シリーズ慣れしているからに他ならない。

 ソフトバンクは2011年以降、日本シリーズに6回進出してすべて日本一になっている。ここ最近のソフトバンクの戦い方を見て、私は「まるで季節労働者のようだ」と評したことがあったが、誰かがケガで戦列を離脱しても、別の選手が活躍し、また誰かが戦列を離れても、さらに別の選手が活躍するといった、好循環が生まれていた。そうして最後の最後となる日本シリーズで全員が揃って復帰したのだから、力の差は歴然だった。

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 これに対して巨人は、日本シリーズに進出したのは13年が最後で、このとき戦ったメンバーといえば、阿部、坂本、菅野、澤村、そして亀井善行の5人しかいない。ルーキーと途中入団の選手以外、全員が日本シリーズに出場しているソフトバンクと、生え抜きでは5人しか日本シリーズを経験していない巨人とでは、経験値がまったく違う。それだけにソフトバンクに完敗したのは、当然のことだと言える。

「日本シリーズを勝つには、相当実力をつけなければいけない」

 このことは、もちろん原監督も理解しており、こうコメントしていた。

「日本シリーズを勝つには、相当実力をつけなければいけないということが、みんなわかったと思います」

©文藝春秋

 プレッシャーのかかる場面で、ミスを連発した。とくに第2戦と第4戦で山本泰寛が犯したミスは、そのまま失点に直結した。また、ルーキーの戸郷翔征も、第3戦でリリーフ登板したものの、フォアボールに加えて自らのエラーで自滅し、いいところなく終わってしまった。プロで抑え切った経験のない戸郷をこうした大舞台で起用すること自体、巨人は戦力が足りていなかった証拠と言えるが、この経験によって若い選手がどれだけ成長するのかも、今年以降のカギとなるのは間違いない。