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「ととのう」を医学的に説明できますか? サウナーが学ぶべき“サウナ基本のキ”

2020/11/22
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そのとき脳では何が起きている?

 そのときの脳の反応を見るために、超高精度な脳波計を用いて30人を計測しました。すると、脳は想定通りに深くリラックスしているのですが、空間や視覚認識を司る右頭頂葉の一部が活性化していました。くつろぎながら、覚醒度が上がって頭がすっきりし、瞑想にも似た状態です。

 サウナ後に感覚が明敏になり、アイデアが浮かんでくるのはこの働きによるのかもしれません。ヤフージャパンの川邊健太郎社長はサウナ好きとして知られており、サウナでビジネスの企画を練っているそうです。

 これが「ととのう」の正体です。お風呂でも心身の疲れは取れますが、サウナほど冷温差が激しくないので、「ととのう」には至りません。「ととのう」はサウナでしか味わえない特権なのです。

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「汗をかけばかくほど良い」は間違い!

 サウナに正しく入れば、効果的に「ととのう」を体感できます。基本はサウナ室→水風呂→室外で休憩、という流れです。

 まず、サウナ室の過ごしかたです。ここで汗をかけばかくほど体が温まった、サウナの効果を得られたと思う方がいらっしゃいます。しかし、これは間違いです。汗の量は指標になりません。なぜかというと、汗には体の“結露”が含まれることがあるからです。

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 コップに冷たい水を入れると、汗をかいたように水滴がつきますよね。それはコップ周辺の空気が水によって冷やされ、空中に含まれる水分が液化したものです。これと同じでサウナ室の気温と体の表面温度の差で、皮膚に水滴がつくことがあります。汗を多くかいたからといって、体が温まっているわけではありません。

 気にするのは汗でなく、心拍数です。心拍数は手元の脈で測ります。サウナ室の高温で体に負荷がかかると心身を興奮させる交感神経が働き、心拍数ひいては脈拍が上がっていきます。そのため、汗ではなく脈拍で体内の変化を把握します。