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区長とホストクラブのはじめての対話

 6月3日。約束の時間に3グループの約20人が来てくれた。胸を撫でおろした。まるでVIPのお客様を扱うように区役所の方が会議室に案内してくれる。

 まずは区長から挨拶。昨日お願いした通り、丁寧に話をしてくれた。続いて保健所長も、我々の健康を第一に考えていることを話してくれた。

 ホスト側からの質問は切迫感に満ちた現実的な話だった。実際に陽性者が出た場合の営業再開の目途、店名公表は本当にされないのか? など店の利益に関わることに集中した。それに対しても、区長たちは丁寧に答えてくれた。

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 会の終盤、ある1人のホストの発言で会場の空気が変わった。

©iStock.com

「電車を降りて、新宿駅から地上に上がって息をつくと、アルタの大型ビジョンで、『夜の繁華街に行くな』と小池都知事が言うんですよ。今からそこに出勤するのに、どうしていいかわからない気持ちになる」

 利益だけの話ではないのだ。自分たちの存在意義の話でもあるのだ。区長たちも黙っていた。その表情からホストたちの気持ちが伝わったように思えた。

 区長たちが、ホスト側と敵対する気がないことは彼らもわかっただろう。予定時間を大幅に過ぎて2時間を超す意見交換会になった。みな参加して良かったと言ってくれた。

 参加者たちに歌舞伎町のホストクラブ経営者で作っているラインに今日のことを報告して貰った。夜、他の店舗からも翌日参加する旨の意見が出てきた。

 あらためて参加表明をしてくれた人たちは、初日に参加したメンバーよりも断然行政に対しての不信感が強い。半信半疑で確かめに来るという姿勢だ。

区長の真摯な対応

 6月4日。前日よりも増え、30人ほど集まった。私とはほとんど接点がない人間が大半だった。前日に引き続き、区長と保健所長が最初に丁寧に話してくれた。いや私の要望を聞いてくれ、昨日よりもさらに丁寧に話してくれた。ホストたちが意見を言う場面になると、予想通り、果たして新宿区は感染症対策を一緒に行うのにふさわしいかどうかを見定めるような態度だった。