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「区長、営業OKって言ってください!」夜の街で起きていた“ホスト”と“区役所”の知られざる対話

『新宿・歌舞伎町 人はなぜ〈夜の街〉を求めるのか』より #1

2020/12/05
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 公に営業して良いとは言えないが、現状の問題は、休業要請が解除されていないが故に、感染者が口をつぐんでしまい感染経路が追えないこと。二次感染を防ぐ方法を考えたい。でも、ホスト業界のことがよくわからない。だから、糸口がわからない。ということだった。

 私は、歌舞伎町のホストクラブの現状を話した。約240軒あって、その多くの店舗がグループ化していること、そしてそのほとんどが企業化していること、今働いている人間たちの気質。基本的なホストクラブの現状を伝えた上で、今のコロナ禍に対してどう向き合っているのか? 報道に対してどう思っているのか? などを素直に話した。

 保健所長は、たくさんのホストたちが毎年インフルエンザの予防接種にやってくる。

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 とても素直で可愛らしい。彼らは決して感染症を蔑ないがしろにしている訳ではない、報道にあるような無責任な人間たちばかりでないことも知っている。職場を教えてくれないホストのことも責めず、彼が悪いのではない、言い淀む気持ちもわかる。と事情も察したとても優しい態度だった。コロナは若くても重症化してしまうケースだってある。私たちは彼らの健康が何よりも大事だ。とまで言ってくれた。

 区長は、ホストクラブという業種を新宿の大事なひとつの仕事として認めてくれた上で、どう予防すれば継続できるのかを一緒に考えよう。とホスト業界で生きている人たちの経済的な生活面も考慮してくれた。区長は緊張感が滲んでいた。本当に歌舞伎町を感染源にしたくないという強い責任感が伝わってきた。

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 私は、巷に飛び交う真偽の定かでない情報ではなく、彼らから正しいコロナの情報を得られる、彼らこそ一緒にコロナ禍を生きていく方法を考えてくれる強力な味方だ。そう思った。

 私の今の気持ちを他の同業者にも感じてもらい、行政側には、もっと我々のことを知ってもらう。そのためには直接お互いの顔が見える存在になることが信頼関係を作る最短ルートだと思った。

 区長に、翌日と翌々日のホストクラブ経営者たちが動きやすい夕方に時間を作ってくださいとお願いした。何があっても時間を空けますと即答してくれた。彼らの熱意があれば、必ず伝わる、官民一体でコロナ禍を乗り切る連帯を作れると思った。