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日本はかつての貿易黒字を凌ぐ投資収益を得ている

 日本は戦後70年にわたって積み上げてきた資本を原資に、多額の投資収益を得ており、今のところ世界最大の債権国の地位を維持しています。2018年における所得収支(投資収益)は20兆円もあり、かつての貿易黒字を凌ぐ額です。

 投資から得られる収益は、一種の不労所得であり、以前は輸出で稼いでいた金額かそれ以上の金額を働かずして得ていることになります。これは、不動産の大家さんと似たようなものですが、考えようによってはこれほど効率のよい稼ぎ方はありません。本来、輸出に従事しなければ得られないお金を、タダで得ているわけですから、その分の労働力を国内向けのサービスに振り向ければ、国民の所得も大幅に拡大するでしょう。

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 国内市場というのも実は宝の山です。

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 日本は人口が減少していくので、今後、消費の絶対値もそれに合わせて低下することが予想されています。これは避けようのない現実ですが、それでも、一定以上の生活水準を保ち、同じ言語を話す1億人の単一消費市場が存在している国というのは、世界を見渡してもそう多くありません。

コロナショックで露呈した日本経済の脆さ

 これは日本が持っている大きな資産であり、これを活用しない手はないのです。今回のコロナショックでは、インバウンド需要に過度に依存してきた日本経済の脆さが一気に露呈しました。日本は国内の消費市場をもっと大事にし、消費を活性化していく方向に舵を切る必要がありますし、そうすれば輸出やインバウンドに頼らなくても、十分に経済を成長させることができます。

 整理すると、日本には投資収益を得るための莫大な資本蓄積と豊かな消費市場があります。日本は消費と投資で十分に豊かな生活を送れるだけのポテンシャルがあり、名実ともに消費国家・投資国家に向けてシフトしつつあります。この現実をしっかりと受け止め、輸出やインバウンドにこだわるのではなく、強みを生かす政策にシフトすれば、再び日本経済を成長軌道に乗せることができるはずです。