「顔の形が変わるほど殴られた」
2020年10月28日の午後9時過ぎ、札幌市中央区のアパートで60代の女性が男に殴打され死亡した事件が起こった。
報道によると、被害者の女性は顔の形が変わってしまうほど何度も殴られた形跡があったという。
まさに常軌を逸した事件である。
殺人未遂の容疑で逮捕された男の名は森晃生(もり こうせい)。年齢は29歳で、被害者とは血のつながりもなかったが、「同居人」としてこれまで一緒に暮らしていた。
しかし森と被害者の女性の関係がみえてこない。
そしてなぜ彼は、今回の凶行に及んでしまったのだろうか?
森晃生の人となりや、彼を取り巻いていた環境に目を向けていくと、今回の事件を単純に“恐ろしい事件”として捨て置くことができないことがわかってきた。
事件直後に送られてきたメール
「森君からメールが来たのは、おそらく事件の直後でした」
そう言ったのは、NPO法人オーエスフォワードの関係者だ。この団体は、ホームレス、心に病をかかえた人、刑務所から出たばかりで行くあてのない人、悪質な“貧困ビジネス”で苦しんでいる人たちを保護し、住宅を提供するなどして積極的に生活支援をしている。現在の受け入れは約170名にものぼるという。
実は森晃生も、以前オーエスフォワードの支援を受け、暮らしていたことがあった。そして取材に応じてくれた職員のC氏は、森から厚い信頼を寄せられており、被害者の女性と同居を始めてからも頻繁に連絡を取り合っていたという。
森が逮捕されたその日の夜もメールが届いた。いわく、同居人と喧嘩をしてしまった――と。
「森君から連絡が来たときは、すでに何もかも手遅れだったのかもしれません」
C氏がメールを受けたとき、いつものように森晃生をなだめた。いささか興奮気味だったように思えたが、別段気になる様子はなかったという。しかしそれから間もなく、警察から一報を受け、森が取り返しのつかない過ちを起こしていたと知るのだった。
ついにやってしまったか――森をよく知るC氏らが、“いつか起こり得るかもしれない”と思っていた最悪な事態が現実となってしまった。