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どこにも居場所がなかった

 では、そんな森は一体どこに身をおけばよかったのだろうか? やはり考えられるのは、精神科病棟や何らかの支援施設だ。しかし森には、もはやどこにも居場所がなかった。

「実際に病院の紹介状をみたことがあるんですが、そこには森君を“受け入れないほうがいい”ということがはっきりと書かれていました」

 実は森は、精神科病棟のほうでは“手がつけられない患者”として烙印が押されており、C氏が出会った当時から、すでに彼は受け入れてもらう病棟を見つけることができない状態だったという。

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©iStock.com

「心に病を抱えている人たちは、最後には病院や施設にも見放され、どこにも行くあてがなくなって、お金もなくなり、最後には犯罪を起こしてしまうんです」

 耳を疑いたくなる悲惨な事件は後を絶たない。そして、常軌を逸した残虐な事件の加害者を理解しようと歩み寄ろうとする者はけっして多くはない。加害者の気持ちはとうてい“理解できない”と考えてしまうからだろうか。しかし、一方で“理解できない異常者たち”を受け入れる場所がないという面も忘れてはならない。