韓国の視聴者が挙げる、さゆりの最高の魅力は「率直さ」だ。
グルメリポーターとして訪れた食堂で、主人を前に「まずいです」とはっきり言ってしまったり、「本当は韓国語が上手いのに、わざと下手なふりをしている」という噂が立つと「キャラクターがあるほうが長く続けられる」とクールに認めてしまったりする。そんな姿が、若者層や女性層から大きな支持を得ている。
大衆文化評論家のファン・ソノプ氏は次のように語る。
「いまでこそ正直に自分をさらけ出す芸能人が支持を得る時代ですが、さゆりが出てきた当時の韓国芸能界は正直さよりも、礼儀正しい姿、視聴者が望む姿を見せるのが主流でした。そんな環境で外国人タレントのさゆりは、飾らない姿で韓国の視聴者にアピールし、『さゆりの話は信用できる』という印象を与えました。また、テレビで見せる“4次元”(一般には理解できない言動をする人)キャラクターとは違い、テレビの外では慎重で深い考えがあることをうかがわせるエピソードも韓国人に大いにアピールしました。
たとえば、広告出演料全額を従軍慰安婦のおばあさんたちの後援金として出したことは、韓国人たちに大きな感銘を与えたし、個人のTwitterでつぶやいた彼女の発言は、多くの若者たちから共感を得て、大きな反響を起こしました」
さゆりは、「誰より自分を愛するべき」というメッセージを込めたTwitterのつぶやきを集めて、『涙をふいて』というエッセー本を出版したほか、韓国で既に4冊の本を出版している人気作家でもある。
人工授精での未婚出産「韓国ではすべてが不法だった」
このように、突飛さと慎重さを兼ね備えたさゆりは、母国の日本で精子寄贈を受け、11月4日、3.2キロの元気な男児を出産した。韓国メディアや、さゆり自身のYouTubeチャンネルを通じて、彼女が語った出産までのストーリーは次の通りである。
「本当に愛する人がいたが、数年間、再会や別れを繰り返した。私は『早く結婚したい』『赤ちゃんが欲しい』と言ったが、彼は嫌いだと断った。悲しかったし、彼に申し訳なかった」
「2019年10月、生理不順で産婦人科を訪ねたところ、卵巣機能が48歳だという話を聞いた。自然妊娠が難しく、今すぐ人工授精を受けても成功確率は高くないとも言われた。目の前が崩れていくように感じた」
「今すぐ誰かに出会って好きでもないまま人工授精を行うべきか、いっそ子どもを諦めるべきか悩んだ。私の性格上、今すぐに誰かに出会うことは難しかった。それでも赤ちゃんがほしくて、精子バンクに連絡し、シングルマザーになる選択をした」
「(日本で精子寄贈を受けて出産した理由について)韓国ではすべてが不法だった。結婚している人だけ試験管授精が可能だった」