文春オンライン

文在寅、支持率急落のピンチ…慰安婦問題、“第2の徴用工裁判”化の兆しも

2020/12/09
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“文大統領”VS“尹検事総長”までの流れ

 11月24日 秋法相が尹検事総長へ懲戒請求をおこし、「職務執行停止」を命じる。韓国憲政史上初めてのことだった。

 

 11月26日 尹検事総長が行政裁判所に「職務執行停止の停止を求める」仮処分を申請。秋法相は検察へ尹検事総長の捜査を依頼。

 

 12月1日 行政裁判所は尹検事総長の申請を認容し、尹検事総長は職務に復帰。この日行われた法務省の検察監察委員会は、「法相の懲戒請求、職務停止、捜査依頼はすべて不適切」とする結果を発表。満場一致の決定と伝えられた。法務省の検事懲戒委員会の委員長を務めるはずだった法務省次官が「自分には(懲戒委員長は)できない」と突然、辞表を提出。2日に行われる予定だった検事懲戒委員会は4日に延期に。

 

 12月2日 文大統領が異例ともいえる速さで新しい法務省次官を任命する。

 

 12月3日 文大統領の支持率が前回から6.4ポイント下がり37.4%に。与党「共に民主党」の支持率も第一野党「国民の力」にわずかだが逆転される。沈黙を保っていた文大統領が懲戒委員会の運営について「その手続きが正当であり、公正であることが重要だ」と発言したと青瓦台が発表。

 

 12月4日 検事懲戒委員会が10日に再び延期される。

身内ではなかった尹検事総長

 文大統領の意志が図らずも表れたのは12月2日。通常なら時間をかけるはずの法務省次官任命が異例の速さで行われ、しかも、その人物が政府にかけられた疑惑事件の被告(政府側)の弁護人だったことだ。中道系紙記者は言う。

「李明博・朴槿恵政権時の積弊清算を次々と行った尹検事総長を身内と思って任命したが、曺国前法相への強硬な捜査を見てようやく、文大統領も与党も彼が身内ではないことに気がついた。

 検事総長の任期は2年で来年7月まで。このままでは文大統領悲願の検察改革に後れが出るだけでなく、文政権に不都合なさまざまな疑惑にも捜査が入ってしまうと戦々恐々となった結果が、今回の尹検事総長への懲戒請求という無理筋につながっている。

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2020年1月7日、「新年の辞」を述べる文在寅大統領 ©時事通信社

 韓国の検察は、他国には見られない絶大なる権力を握っていて、なにより『政治検察』といわれるように、時の政権に与して動くという悪習がある。ですから、検察改革は必ず行わなければなりませんが、今回の政権の動きは検察改革なんていう崇高なものではない」

 そもそも、「職務執行停止」の理由として挙げられていた6つの疑惑には、「政治的中立を疑わせるような、退任後に政治家に転身するような発言をした」という荒唐無稽なものもあり、唯一取り沙汰され、抗議声明が採択されるのではといわれた「判事への違法な査察」も裁判官会議では案件にすらならなかった。

 検察内からは当然、反発の声が上がり、韓国全国の地方検察庁などに所属する平検事全員が秋法相の決定に反対する声明を出し、世論調査でも56.3%が「秋法相の懲戒請求は間違っている」と回答した(リアルメーター、11月26日)。

 こうした状況をみると、秋法相は四面楚歌なのだが。