「AV教科書化」に対する問題提起
「性のせいで苦しむ人をなくす」を理念に活動している岡野めぐみさんは、中央大学の学生だった2018年11月に「AV教科書化に物申す」というテーマでシンポジウムを主催した。ちなみにこの本が採用した「AV教科書化」という概念はこのイベント名に由来する。豪華な登壇者たちがAVというなかなかキワドイ内容を語り尽くすのを聞こうと、多摩にある中央大学のキャンパスまで1000人が押し寄せた。
ゲストはしみけんさん、紗倉まなさん、一徹さん、コンピューター園田さん、遠見才希子さんの5人である。しみけんさんと一徹さんは超有名AV男優であり、紗倉まなさんは超有名AV女優である。コンピューター園田さんはAVメーカーの社長であり、遠見才希子さんは産婦人科医だ(*3)。
イベントを主催した岡野さんにイベントの内容や問題意識を尋ねてみた。
――どういう内容のイベントだったのですか?
3部構成のイベントで、第1部は「AVはフィクションである」ということを伝えるために、AVの裏話や「実際はどうなのか」というテーマで話し合っていただきました。例えば、男優さんと女優さんに実際の私生活はどうなのかという話をお話ししていただくことで、来場者の方々に、いかにAVがフィクションであるかを知っていただきました。
第2部では第1部での学びを受けて、「お手本とするべきAVがなくなった今、では何から学べばいいのか」ということで、「性教育」をやりました。これは産婦人科医の遠見さんのパートです。
第3部は質疑応答です。大学生が悩んでいることだとか、来場者の皆さんが悩んでいることだとかを、登壇者みんなで共有して、話し合いました。
――「AVはフィクションだ」がテーマだったということは、逆に言うとAVがフィクションだとわかっていない人がいるのでしょうか?
そうですね。程度の差はありますけど、AVの真似をしてしまうことは特に大学生だとよくあることかな。大学生じゃなくてもよくあるんですけどね。それこそ、「嫌よ嫌よも好きのうち」と思い込んでいる人もいます。性行為の流れが結局、AVの流れの真似であることもあります。
他に見本にするものもないし、性教育もちゃんとなされていない。義務教育で性交に至る過程とか性交自体も扱いもしないのに、どうやってセックスを学ぶんですか、という感じです。