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もし親しい仲間がうつ病になったら……

 ドラマでは、兄の章氏が先崎氏の顔を見てすぐに入院を勧めるシーンや、病にかかってから初めて棋士仲間に将棋で勝利するシーンなど、安田さんの表情がポイントとなる場面が多い。

「回復期は、感情が戻ってくるということなので、今までやらせていただいた役柄とそれほど違いはありません。しかし、病の状態が悪いときの無表情のほうは、つくりあげるのがすごく難しかった。自分の解釈が合っているのか分かりませんが、無表情とはいっても、心は揺れている、しかしそれが表面に出てこない状態なのではないかと。自分の思いと脳から出る信号が違っている。改めて、怖い病気だと思いました」

 うつ病は当事者だけでなく、それを支える家族や身近な人にとって負担が大きい病気だ。家族全員で先崎氏のうつ病と闘うなか、精神科医である章氏は、うつ病の症状に苦しむ弟に繰り返し「必ず治ります」と連絡したという。うつ病がとても身近な病気である現代、安田さんは章氏のこの対応を心にとどめておきたいと語る。

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「もし親しい仲間がうつ病になったら……考えれば考えるほど涙が出そうになりますけど、医師でない自分が言えることがあるとしたら、『みんな待ってます』かな。この作品から、それを教えてもらいました」

やすだけん/1973年、北海道生まれ。舞台、映画、ドラマなどを中心に全国的に活動。話題作に次々と出演し、硬派な役から個性的な役まで幅広く演じている。

INFORMATION

特集ドラマ「うつ病九段」
https://www.nhk.jp/p/utsubyou-kudan/ts/9Y5RJLZY84/