起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。
もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第40回)。
複数の女性と付き合いながら、緒方は「別格」
1985年4月頃に布団訪問販売会社『ワールド』の事務所兼自宅ビル(以下、本社ビル)を新築した松永だったが、この時期の会社の経営状況は火の車であるにもかかわらず、父親の戸籍から分籍させた緒方以外にも、同時に複数の女性と交際するなど、派手な生活を送っていた。
ワールドの従業員だった山形康介さん(仮名)は、2002年当時の取材で次のように答えている。
「松永はいったいどこで出会ったのかは話してくれませんが、常に複数の女性と付き合っていました。私が知っているだけでも10人は下りません。スナックのママや看護婦、学校の先生など、みんなチャーミングな女性でした。私は松永がそうした愛人と会う際に、車でよく送り届けていました。とはいえ松永は直接彼女たちの住まいに行くわけではなく、コンビニとかスーパーの駐車場で待ち合わせ、そこに相手が車に乗ってやってきては、松永を乗せてどこかに行くというパターンで、帰りも同じような場所まで迎えに行きました。
ただ、こうした女性たちのなかでも緒方(純子)は別格で、彼女のために久留米市内にアパートを借りていました。イメージとしては、彼女は本妻で、ほかは愛人なのです。
自殺者も出た松永の愛人たち
しかも、松永はそれらの愛人たちに偽名で布団の契約をさせたり、サラ金で金を借りさせるなどして、カネを引っ張っていました。これは後になって警察の人に聞かされた話ですが、松永の愛人のひとりで、柳川市と大川市の境の辺りに住んでいた女の人が自殺したそうです。時期は松永と緒方が柳川市から逃げ出した直後(1992年秋)らしいのですが、私もその女性には記憶がありました。20代の今でいうフリーターのような女性です。ただ、出会いのきっかけだとか、自殺の理由についてはわかりません。
やがて緒方が本社ビルの3階に住み始めたこともあり、松永は会社に女を連れ込むなどはしなくなりました。当時、大木町(福岡県三潴郡)に『大木町支店』としてアパートを借りていたのですが、そこが女との逢引き部屋になっていました。ただ、会社を『ワールド倶楽部』との名称にした頃、高校を卒業したばかりの女の子を新卒で採用したんですね。ポチャッとした、地味な感じの女の子だったんですが、その女の子を『モノにした』と語っていたことがあり、以来、会社の中でもセックスをしていたようです。3階に社長室があるのですが、そこでやっていたと思います」