文春オンライン

特集観る将棋、読む将棋

2020/12/18

雰囲気的には奨励会三段くらいでしたね

――入門に際しては、実際に対局などをするわけですか。

井上 ご両親と一緒に家に来てもろてね。それで一局、飛車落ちで指してみたんですけどね。

――どういった印象でした?

井上 これはもう、すごいなと思いました。雰囲気があってね。当時、小学校5年生でしたが、雰囲気的には奨励会三段くらいでしたね。将棋に賭けるといった迫力がありました。指し手も鋭くてかなり強かったですね。

――小学校5年生のときの棋力は、稲葉先生や船江先生とくらべると?

井上 それはもうぜんぜん菅井くんが上でしたね。これは間違いないなと。

――それはプロになれる?

井上 そうですね。

 

――小学5年生で一局指して「この子はプロになれる」と思う子は、今まで何人いましたか?

井上 うーん。そうですねぇ。うーん。菅井くんくらいかもしれませんねぇ。

――では菅井先生は、突出したものを持っておられた?

井上 そうですね。

「俺もついに名人の師匠か」と思ったんですけどね(笑)

 井上九段の直感通り、菅井少年は小学6年生で奨励会入会。そして17歳のときに三段リーグを突破してプロ入りを決めている。そして時は流れ2017年には、王位戦において王位を獲得。井上一門に初のタイトルをもたらした。

井上 あの王位戦は、相手が羽生さんでしたからね。まさか初挑戦で、あの羽生さんからタイトル取るとは思っていなかったので、びっくりして。本当に菅井くんのいいところばっかり出たタイトル戦でした。嬉しかったですね。

――驚きが大きかったですか?

井上 一門でタイトルを取るなら稲葉くんからかなと思っていたので。

 

――2017年の名人戦、佐藤天彦名人に稲葉陽八段が挑戦されました。

井上 2勝1敗とリードしたときは「俺もついに名人の師匠か」と思ったんですけどね(笑)。お祝いのスピーチも考えようかと思ったらあかんようになりました(結果2勝4敗でタイトル挑戦失敗)。

――タイトル戦などでは、将棋のことについて相談されるといったようなことはあるのでしょうか。

井上 いやあ、そんなん、求められても困ります(笑)。

――精神的なことを助言されたりとかは?

井上 名人戦のときは、「勝っても負けても勉強やから。勝敗気にせず戦ってほしい」って言ったんですけど、あれがよくなかったかな。

――といいますと?

井上 菅井くんは「絶対に取る」といった迫力を持っていたんでね。だから取れたんかなと。そういった「絶対取れ」といったアドバイスをすべきだったかなと、菅井くんを見て思います。

 

悩んでいるみたいですね。弟子との接し方

 初めて盤を挟んだときに「プロになる」と感じさせた雰囲気。そして初めてタイトルの挑戦のときに「絶対に取る」と感じさせる気迫。やはり普通の人とは違うオーラを菅井竜也八段はもっているのだろう。まだ20代で、現役のA級棋士であるものの、すでに複数の弟子を取っているところも菅井流なのかもしれない。

――菅井先生がお弟子さんを取られたときは、なにか相談などはされましたか?

井上 そのときは相談されたかなあ。今はよく相談されますよ(笑)。彼も真面目なんで、どうしたらいいですかねって。悩んでいるみたいですね。弟子との接し方。

――菅井先生のお弟子さんは、孫弟子にあたられるわけですが、一緒に一門研究会のようなものもされているのでしょうか。

井上 そうですね。月に2回ほど。菅井くんの弟子も入れて24、25人の奨励会員を集めてやってますね。