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特集観る将棋、読む将棋

2020/12/18

今は「才能」と「努力」どっちもないと……

――井上門下は18歳までに初段になるという規定があると聞きましたが。

井上 今の奨励会の規定は、僕が入ったときと同じなんですよね。でも今は入会の時期も低年齢化してますので、何年もかけて初段になれないようなら、他の道に行った方がいいのではないかと思っています。ただ、関西では古森くん(悠太五段)は19歳くらいまで1級とか初段でしたが、今では活躍していますから、人によって伸びる時期は違うのかもしれんなと悩んだりもしています。でも、基本、今までは18歳で初段になれなかったらやめてもらってますね。

――よく「才能」と「努力」は、両輪のように言われますが、そのあたりどのようにお考えですか?

井上 うーん。僕らの時代だったら才能か努力か、どちらかあればプロになれたと思いますが、今はみんな優秀ですからね。どっちもないとプロになれないんじゃないかなと思います。そのなかからタイトルを取るとなれば、どっちもすごい人でしょうね。

 

――最後に、ご自身の将棋について、これからの目標を教えてください。

井上 それなりにボチボチ戦えたらと思っています。今の最新形の将棋は自分には指せないので、自分なりの独自の形を追求していきたいなと。一応、800勝が区切りとしてあるんですよ。今、750勝くらいなんで、あと50勝。それは達成できたらなと思っています。

三段リーグに6人いる弟子には「ぜひプロになってほしい」

――お弟子さんへの期待はいかがですか。

井上 A級の2人には、ぜひタイトルを取って欲しい。あと船江くんと出口くんには、もっと上で活躍して欲しいですね。できると思いますんでね。あと三段に6人いてますけど、みんな可能性あるので、ぜひプロになってほしいと思います。

――今期から中七海さんが、奨励会三段になって、女性としては西山朋佳さん以来の3人目ということで注目を集めておられます。

井上 新三段になって苦戦していますが、真面目でコツコツやるタイプなので、慣れてくればそれなりの成績を出すと思っています。

 

――ちなみにタイトル戦にお弟子さんが出ると、やっぱり和服をプレゼントされたりするものですか?

井上 ああ、そうですね。

――それはタイトル初挑戦のときだけ? 2回目からもですか?

井上 それは1回目だけ(笑)。

――プロになったお弟子さんにも、なにかプレゼントされますか?

井上 僕の場合、特注で扇子をたくさん作ってもらって、それをお世話になった方やファンの方に御礼に差し上げなさいと渡します。これは段が上がったときにも渡していますね。もう長いこと作ってないんで、早く次もね、と待ってるんですけどね(笑)。

ドラマは、奇跡ともいえる偶然のうえに成り立っている

 井上慶太九段にお話をうかがっていると、今ここにある将棋界の歴史というのは、本当にいろんな偶然によって織り成されているんだなと感じる。

 もし井上九段のマンションがすんなり決まっていれば、弟子との出会いもなかったかもしれない。

 もし井上九段が、藤井猛九段の銀の上がりを予見したら「藤井システム」の誕生も、その後の居飛車と振り飛車の戦い方も変わっていたかもしれない。

 いろんな偶然が織りなすドラマと歴史。将棋界の魅力は、そんな奇跡ともいえる偶然のうえに成り立っているのだろう。

 

写真=山元茂樹/文藝春秋

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