私は生きて幸せになりたいのです
ともかく、今、私には3つの道があります。ひとつはチャンスを逃しこのまま永遠にここにいる。ふたつめは離婚をし、子どもたちと別れる。3つめは私がクスリの注射に成功する。
それらのどれを選択するのかは、私の決断次第です。もし子どもと別れるなら私は生ける屍になります。もし、このまま、草刈りをしたり洗濯したりしなければならないなら、死んだほうがましです。でも私は生きたいのです。生きて幸せになりたいのです。そのためには子どもたちと一緒に暮らすことです。私の望みはそれ以外何もありません。
私は、決意しました。絶対に、成功させます。そう思い定めると勇気が湧いてきました。
それでも、睡眠薬を飲ませるときは、放心状態でした。自分の手が何をしているのかもわかりませんでした。多分、日本へ来てからの長い苦しみや悲しみが私の手を支配していたのです。茂さんがご飯を食べ、風邪薬と思い込んで睡眠薬を飲むのをぼんやりと見ていました。〉
注射器の感触
詩織は、とうとう茂に睡眠薬を飲ませ、暗黒の日々に繫がる第一歩を踏み出してしまった。睡眠薬は詩織の手記には久美子が準備したとする記述もあるが、警察の捜査では、かねてから詩織自身への薬として医者から処方してもらっていたベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の含まれる精神安定剤メイラックスとセルシンが準備された、と食い違う。睡眠薬を茂に飲ませる2日前、メイラックス28錠、セルシン14錠を病院で処方してもらっている。そのメイラックスとセルシンを茂に密かに飲ませたというのが警察の見方だ。
そしていよいよインスリンだ。
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