国際的にも分かれた新型ウイルスの評価
クラスターが発生する環境をある程度特定できた2月下旬、今後、COVID―19がパンデミックになっていくのかどうか、専門家の間でもまだ意見が割れていました。
これは国際的にも同様で、ハーバード大学の先生はパンデミックになって、3、4年続くと、そのころから言っていました。一方で、僕のすごく仲良しのオックスフォード大学のイギリス人研究者は、流行の中心は中国で、それも今がピークで制御できるから、まだまだパンデミックじゃない、伝播している範囲も狭いんだと言っていて、諸説入り乱れている段階でしたね。それくらいこの流行は過渡期と言われる状態に長く潜む傾向があって、断定的な解釈は困難だったのです。
「パンデミックになるか半信半疑だった」
僕自身もパンデミックになるかどうかの予想は、発病前の二次感染があることからすると必ず起こりそうだけれど、主にクラスター形成で二次感染が広がっていることが確実で、アウトドアや市中の接触では感染が起こりにくいと感じるので、感覚としては半々ぐらいで、世界全体でハイリスクな接触を避けることができれば、もしかすると大規模流行が起こらなくて済むのかもしれない、という期待に近いような意識を持っていました。あるいは、日本では大規模にならずに抑えられるだろう、とか。きちんとした客観的なサポート(データに基づいた支持)があったわけではなかったんですが、パンデミックになるかどうか、まだ半信半疑だったんです。
一方で、この時期、北海道では感染が拡大していて、接触者が追えない状況になっていました。押谷先生は「リスク管理チーム」なので、その責任感から「北海道は大丈夫かな、大丈夫かな」と一日に何回も言うんですね。なんとしてでも感染を拡大させないために、次に打たないといけない手はなにか、疫学データを見ながら瞬発力よく考えていく役割を押谷先生が担っていて、僕たちはデータ分析から、対策として正しい複数のオプションを理論的基盤と共に出していく、という役割分担でした。
そして、2月28日、北海道で、知事による緊急事態宣言が発出されるのです。