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「昨日はありがとうございました」身に覚えのないDMから始まった“恐怖体験”の結末

「昨日はありがとうございました」身に覚えのないDMから始まった“恐怖体験”の結末

続々・怪談和尚の京都怪奇譚――「既視感」

2021/01/03

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書

note

その日は一日中お寺にいたのに……

「先日はありがとうございました」そう言われるのですが、どなたか分かりませんでした。私が返答に困っている様子を察してか、SNS上でメッセージをした者ですと言われるのです。その男性は、お礼の手土産まで持参しておられ、単なる嘘や間違えではないと感じました。

 私は男性をお寺に招き入れると、私と会った日の事を詳しく教えて下さいとお願いしました。

「○月○日、場所は○○ショッピングモールのカフェで、時間はお昼頃でした」

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 男性はそうおっしゃるのですが、そんな事は断じてありません。なぜなら、その日は一日中、お寺で御札を書いていたからです。

 私と会ったと話される男性は、その日、ショッピングモールに買い物に行かれていたそうです。買い物を終えた男性は、一休みしてから帰ろうと、モール内にあるカフェに入られました。するとそこに、私が居たとおっしゃるのです。

私しか知らない話を語っていた

 男性は私のことを以前からテレビなどで知って下さっていたようで「いつもテレビで拝見してます」と声を掛けられました。

 すると私らしき人物は、嬉しそうに、良かったら一緒にコーヒーを飲みましょうと誘ってきたというのです。

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 男性も私とゆっくり話が出来る機会が出来たと一緒のテーブルにつかれたそうです。

 そこで私らしき人物は「来月の○日に東京に仕事で行くんです」とか「現在、こんな原稿を書いているんです」とか、私しか知りえない内容を語ったというのです。

 実際、私らしき人物が語った内容は、事実と間違いなく一致しておりました。