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「昨日はありがとうございました」身に覚えのないDMから始まった“恐怖体験”の結末

「昨日はありがとうございました」身に覚えのないDMから始まった“恐怖体験”の結末

続々・怪談和尚の京都怪奇譚――「既視感」

2021/01/03

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書

note

まるで予言のような会話

 もしかしたら私の記憶がおかしくなったのかとさえ思えましたが、それも絶対にあり得ません。

 男性は、その他にもこんな話を聞きましたと、驚くような話をされました。

 それは、未来の日本の話や、人類の話でした。

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 〇年には、日本でこんな事が起こり、世界ではこんな事があり、○年にはこうなりますよと、まるで予言の様な話をしたと言います。

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 私はこの話を疑う事が出来ませんでした。予言めいた部分は別としても、来月のスケジュールや書きかけの原稿内容までもが一致していたからです。

 その後、私らしき人物は先に席を立ち、お店を出たそうです。その際に二人分の会計を済ませていたようです。

 男性は、私がいくらお断りしても、お礼の手土産を置いてお帰りになりました。

そのショッピングモールに行ってみると……

 それから数日して、私は一人で男性が私と出会ったといわれるショッピングモールに実際に行ってみることにしました。

 ショッピングモールに向かう道中も初めて通る道ですし、建物も見た記憶は全くありませんでした。

 そして、男性のおっしゃっておられたカフェに向かいました。カフェのある階に着くと、私は不思議な感覚に陥りました。それは、「既視感」です。

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 初めて訪れた場所、体験のはずなのに、二度目のように感じる事があります。これを既視感と呼びます。フランス語では“デジャブ”と言います。

 初めて来たにもかかわらず、カフェのある階に着いた途端、カフェはこっちだと分かったのです。

 そして、そちらに行くと本屋さん、そこを通り過ぎると服屋さんというように、初めて来たとは思えない感覚に囚われたのです。