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そのカフェに入ってきた人物

 私はこの「既視感」が、現実と一致しているのか実際に歩いてみると、そこには本屋さんや服屋さん、最後にはカフェまで辿り着いたのです。

 ここまで来ると不思議と言うよりも恐怖さえ感じました。気持ちを落ち着かせるために、私はカフェに入りました。

 すると、一人の男性が入ってこられたのです。私は驚いて声が出そうになりました。

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 その男性は、先日お寺に来られた方だったのです。

 私は思わず声をかけようと近づきました。すると男性は私の顔を見るなりこうおっしゃいました。

「あ、もしかして三木大雲住職ですか。私ファンなんです」と。

 私は握手を求められ、それに応じました。しかし男性は、私とは初めて会ったかのようなご様子でした。

今まで誰にも話したことがなかった

「前に見たことがある」そう感じた時、もしかすると、それはもう一人の自分が経験していた事なのかも知れません。

 その逆に「未視感」という言葉があります。フランス語で“ジャメブ”というそうですが、以前に経験したことを未だしていないと感じることだそうです。

 この一連の奇妙な経験は、今まで誰にも話をしたことがありませんでした。

 しかし、本書に記しましたのは、男性からお聞きした予言内容が、少し当たり始めたからです。

続々・怪談和尚の京都怪奇譚 (文春文庫)

大雲, 三木

文藝春秋

2020年8月5日 発売