京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『続々・怪談和尚の京都怪奇譚』(文春文庫)より、背筋も凍る「怪談師」を特別公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わる……のかもしれない。
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皆さんは「怪談師」という方々をご存じでしょうか。
読んで字のごとく、怪談話をする人の事を怪談師と呼びます。私なんかも怪談師と呼んでいただくことがあります。
特に職業というわけではありませんので、どなたでも怪談話をするのが好きな方々は、怪談師を名乗れるわけです。
そんな怪談師を名乗っておられる、徳山さんと言う方が、お寺に相談に来られました。
私が相談内容をお尋ねすると、憔悴しきった様子で、こんな話を聞かせてくださいました。
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これは、私がAさんから聞いた話です。
Aさんは、大学を卒業してすぐに、運転免許を取られました。
運転免許を取得後直ぐに、中古の軽自動車を買って、ドライブに出かけたそうなのです。
助手席には、彼女を乗せて、深夜に出発されました。深夜に出発というので想像がつくかも知れませんが、彼らの向かった先は、とある心霊スポットでした。彼女には、行き先は内緒にしていたそうです。
なぜなら、彼女は昔から少し霊感があり、心霊スポットに行こうと誘ったら、絶対に怖がってついてきてくれないからです。
「どこに連れて行ってくれるの」と目的地に期待を懐く彼女に、夜景の綺麗な場所とだけ伝えて、車は山道を進んでいったそうです。
嫌な予感がする……
1時間近く車を走らせて、目的の建物の近くに車を止めました。
Aさんは、彼女の手を引っ張って、心霊スポットの建物に向かって進みました。
ここまで来て、彼女はおかしいと気がついたそうです。
「A君、本当に夜景の綺麗な所に行くの」そう聞かれたAさんは、実は心霊スポットに向かっていることを話しました。
案の定、彼女は怖がって車に戻りたがりましたが、車まで一人で戻るのも怖いと、一緒に目的の建物まで行くことを仕方なく了承したそうです。
ジャリジャリと土の地面を踏む音と、ザーと風で木々が揺れる音に、彼女は嫌な予感がするとAさんに言ったそうですが、Aさんは引き返す気は全くありませんでした。