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「怖い話」が読みたい

2021/01/11

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書

 やがてその声は「あなた助けて」「パパ早く来て」

 それは彼女の声とは明らかに違う小さな女の子の声でした。

 全身の震えが止まらなくなったAさんは、そのまま車に走って戻り、彼女を置き去りにして帰宅してしまいました。

 その後、彼女は行方不明となり、未だに発見されていません。

 そして、Aさんは、毎日の様に、寝ていると金縛りになり「熱い助けて」という火事で亡くなった二人の声が聞こえるようになったそうです。

*   *   *

 徳山さんは、話し終えると、お出ししたお茶に口をつけ、再びゆっくりと口を開かれました。

*   *   *

怪談には続きがあった……

 この話をある怪談のイベントで話したんです。すると聞いていた方の中で評判になりました。

 そして、怪談師をしているとつきものの質問なのですが「この話、実話ですか」と聞かれました。私は「勿論ですよ」と答えると「怪談師の中でもこんなに怖い実話怪談を持っているって徳山さんは凄いですね」と褒められました。

 それからは、聞きに来てくれた人達に「建物のある場所はどこですか」「Aさんは今どうしているんですか」「彼女は今も行方不明なんですか」と沢山聞かれました。

 私は凄く嬉しくなりました。みんなが怖がってくれることは、怪談師としては凄く嬉しいことなんです。

 そして私は、みんなに言いました。

「実は、このAさんっていう人ですが……」

 静まりかえった会場で、スポットライトを受けているような良い気分になっていました。

©️iStock.com

「このAさん、実は私なんです」

 そう言いました。すると会場に居た人達は、更に驚いてくれました。

 私はこのまま怪談師として有名になれるのではないかと、この時は小躍りして喜びました。

金縛りの最中に聞こえた声

 しかし、その数日後のことです。

 深夜私が寝ていると、金縛りにかかりました。正直、怪談師を名乗りながら、霊的な経験はこの時が初めてでした。

 体は全く動かすことができず、息をするのもやっとといった感じです。苦しい、助けてと心の中で叫びましたが、声にはなりません。

 このままどうなるのだろうと思っていると、突然、焦げ臭いにおいがしてきたのです。