「3密」のようには広まらない「5つの小」
こうした小池百合子の姿を知事経験者の片山善博は、著書『知事の真贋』(文春新書)のなかで「広報係長」と呼んで、ほめ殺し気味に評価している。和歌山県の仁坂吉伸知事のように深く勉強すれば独自の対策が打ち出せるが、勉強もせずにそれをやろうとすると「生兵法は大怪我のもと」になる。だから小池都知事が「広報係長」に徹したのは、都庁の仕事を邪魔しないという意味で正解だったという声に同感であると述べている。
なるほどそうだ。小池百合子は知事として、満員電車対策に「2階建て車両」、東京五輪の暑さ対策で「かぶる傘」など、一時的に注目を集めたいだけのアイディアを披露してきた。コロナ対策にしても第三波の渦中に提言した「5つの小」は、政府が考案した「3密」のようには広まらない。そればかりか「ウィズコロナ東京かるた」を発表したりする。
かつて新党ブームに乗っかり、ミニスカート姿で「日本新党のチアリーダー」として政界に入り込んだ小池百合子は、いまだプレイヤーではないようだ。
仕事の足を引っ張った横文字好きの性分
「3密」を広めた小池百合子は同じ頃、「ロックダウン」を叫んでは危機を煽りもした。現行の法制度では都市封鎖はできないにもかかわらず、だ。
ふたたび『調査・検証報告書』を紐解けば、政府は「海外のようなロックダウンではない」と説明に追われる事態となり、そのため「小池知事のロックダウン発言がなければ緊急事態宣言のタイミングは、あと一週間は早められた」と、内閣官房スタッフは当時を振り返っている。「ロックダウン」においては、横文字好きの性分が政府の仕事の足を引っ張った格好だ。
ところでなぜ小池百合子は「ロックダウン」などと、法令上、出来ないことを囃し立てたのか。片山善博は前掲書で、北海道知事の緊急事態宣言によって「法的根拠がないことをリーダーが行うと、皆が快哉を叫ぶという構図が生まれていきました」と述べている。こうした構図を見抜いて、法的に出来ないことを叫んではウケ狙いをし、くわえてそれが出来ない政府を弱腰に見せることで、「小池さんが首相なら」と思わせようとでも思ったのか。
いずれにせよ、危機に強い政治家として自分を演出した小池百合子は、「排除します」発言で失った勢いを取り戻し、大復活する。すると今度は世間に飽きられないようにと話題作りに精を出す。
柄物の布マスクや「口紅忘れちゃった」などで女子力アピールをし、「東京アラート」と称して都庁やレインボーブリッジを赤くライトアップする。かつて「投票所がお葬式みたい、インスタ映えしない。立候補はSNOWで自撮りを」と女子大学生社長が言ったが、それに通じる感性だ。