文春オンライン

2020年の言葉

「3密」考えたのは小池百合子じゃなかった…新型コロナ、都知事の“共犯者”は誰だったのか

「3密」考えたのは小池百合子じゃなかった…新型コロナ、都知事の“共犯者”は誰だったのか

2020/12/27
note

「いつもと違うマスクですね」メディアという“共犯者”

 こうした小池百合子の人気取りを支えるのが、メディアである。

 フリージャーナリスト・横田一の著書『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)はその実態に紙幅を割く。小池百合子は記者の選別をして、記者会見では自分に好意的な記者に質問の機会を積極的に与えている。たとえば指名回数ランキングで上位のある記者は、小池知事が力をいれている「無電柱化」について繰り返し質問していた。彼女が喋りたいことを質問することで“好意的記者”とみなされ優先的に質問ができるようになったのだ。

 こうしたお気に入りの記者たちは、コロナ禍にあっても「今日、知事はちょっといつもと違うマスクをつけていらっしゃると思うのですけれども」などと質問しては、おしゃれなマスクや口紅の話を小池百合子に差し向ける。するとその受け答えがテレビ受けするネタになる。昨今、政治家とメディアの共依存が言われるが、小池知事とメディアは互助の関係にある。

ADVERTISEMENT

2017年、都議選を控えて髪を短くした(2月撮影) ©文藝春秋

 小池百合子は記者会見の時間の多くをパフォーマンスに費やし、残り時間を質疑応答にあてるが、それもお気に入り記者との戯れに費やす。こうした小池百合子や、記者からの質問をコントロールする菅義偉の姿をみると、昨年の闇営業騒動で記者会見を開いた吉本興業の岡本昭彦社長が「質問の手が挙がらなくなるまでやる」と言って、記者たちのノートPCのバッテリーが切れたり、立ち仕事のカメラマンが倒れたりするまで記者会見を続けたのが立派に思えてくる。

「本当のファインプレーは目立たない」というが

「ワンフレーズ政治」、「テレポリティクス」(テレビを通じての政治活動)。小泉政権の時代以来、大衆の熱狂を生みだす手法として取り沙汰されてきたが、コロナ禍における小池百合子や吉村洋文大阪府知事のふるまいはその極みであった。これまた片山善博の著書を持ち出せば、派手なパフォーマンスばかりにテレビカメラは集まるが、コロナ感染の抑制で着実な成果をあげる和歌山県の仁坂知事の施策を伝える姿勢が求められるのではないかと述べている。

 たしかにそうだ。テレビ映えしないものを、それでも伝えようとするのが本当のジャーナリズムだろう。

小池百合子都知事 ©︎AFLO

 野球では「本当のファインプレーは目立たない」という。ジャンピングキャッチなどの派手な動きをせずとも、あらかじめ守備位置を変えたり、素早く動きだしたりすることで、平然と捕球する。それが本当のファインプレーだ。小池百合子や吉村洋文は、見せかけのファインプレーと珍プレーを繰り広げているだけではなかったか。

 コロナ危機が深刻な地域ほど、そこの知事は注目を集め、テレビ露出が増えて人気が高まる。しかし事態を深刻にしたのはいったい誰なのか。小池百合子の流行語大賞受賞の虚しさはここにある。

「3密」考えたのは小池百合子じゃなかった…新型コロナ、都知事の“共犯者”は誰だったのか

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー