昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/12/27

ねこまんま、全面肯定!

 一鍋で作れるスープをごはんにかけて、一皿で食べる。スープにはもともと、野菜も肉や魚介などのたんぱく質も、海藻や豆などもたっぷりとれるという利点があるが、そこに炭水化物も加われば、一種の完全食となる。経済的で味の調整もしやすい。さらに、油で汚れる炒め物や揚げ物と違って、スープの鍋や皿は洗うのも気楽だ。作る人にとってはこれほどありがたい料理はない。リモートワークで自宅にいる人でも、1時間の昼休みに作って食べて片づけるまで、コンパクトに行える。レンジでゆでたパスタにレトルトのパスタソースをかけて食べるより、はるかに健康的であることはいうまでもない。

 外では、食べ方を相手と合わせるマナーも必要だが、家での食事には自由さがあるべきだ。スープかけごはんがどうしても嫌だ、許せない、という人に、無理に食べろとは言わない。好き嫌いや、守ってきた習慣はその人だけのものだからだ。でもだからこそ、スープかけごはんを思う存分食べたい! という自由もまた、行儀が悪いという慣習で縛られるべきではないと思うのだ。そんな思いを込めて、スープかけごはんの表紙には、「『ねこまんま』全面肯定!」という言葉を入れた。

©土居麻紀子

「チルアウト」なスープかけごはん

 と、ここまでなんだかんだと理屈をこねてスープかけごはんを押し出してきた私だが、スープをごはんにかけるおいしさを伝えたかった、というのが、何にもまさる本音だ。

 スープかけごはんは、いわゆる雑炊やおじやとはちょっと違う。カレーライスと、カレーとごはんが最初からまんべんなく混ざっているものを想像してもらえれば、違いは分かってもらえるだろうか。おすすめの食べ方としては、鍋を食卓の真ん中にドンと置き、各自が皿や碗に盛ったごはんに汁を好きなだけかけるのが理想的。白いごはんにスープをかけて、ごはんに少しずつ汁がしみていくその感じは、雑炊では出せない。かける量も回数も、その人の思う感じで作りだせる。

 本の前書きにも書いたのだが、あたたかいスープの染みたごはんを口に入れるとき、具とスープとごはんが口の中でほろほろと合わさるとき、ストレスフルな世の中で、スープかけごはんには、ほっと包み込んでくれるやさしさがある。一日の仕事を終えた自分に、今日もよくがんばったと、気持ちをゆるめてくれるようなくつろぎを与えてくれる。このくつろぎ感、最近流行の「チルアウト」という言葉がぴったり当てはまるようだ。

 コロナにはじまりコロナに終わった2020年、人々の心は、どこかに落ち着ける場所を求めていると思う。作るのも楽、食べれば癒し。スープかけごはんはまさに今の私たちにこそ、差し出されるべき食べ方ではないだろうか。

この記事の写真(4枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー