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2021/01/05

 加えて、メジャースポーツをテーマにするとどうしても既存の作品と展開で被る部分もでてくる。「どうせやるならこれまであまり取り上げられていない新しい競技を…」という理由も大きかったそうだ。

「名前は知っているけれど、実態は知らない」競技

 そしてもうひとつ。カバディが「ネタスポーツ」と言われ続けてきた歴史があったからこその魅力もあったと小林さんはいう。

「カバディって『誰もが名前は聞いたことがあるけれど、実態は知らない』競技でしょう。そういうこと自体が、ある種鉱脈なのかなと。僕が興味を持っているくらいだから、たぶん他の人にも『こういう競技なんだよ』というのを分かりやすく提示できれば、興味を持ってもらえるんじゃないかと思ったんです」

 ほかにもフライングディスクなど別の種目も漫画のテーマ候補に挙がったそうだが、まずは一度実際の競技を見てみよう、と取材に行くことになったという。

作者の武蔵野さん(左)と担当編集の小林さん(右)

 そうして実際にカバディ取材に赴くと、そこには衝撃の光景が広がっていた。

 武蔵野さんが振り返る。

「日本カバディ協会さんが月に1回、中学校で開催している体験会があるんです。競技人口の多い競技ではないので、そこに日本代表クラスの選手も来ていて。取材に行って一発でわかったんですけど、選手の体が違うんですよ。とてもじゃないけど、ふざけてやるスポーツ選手の体じゃない。それで『あ、これはすごい競技なのかも』と思いました」

パワーとスピードの両方が必要な「カバディ」

 カバディという競技は簡単に言えば、相手選手へのボディタッチで得点が入る変形鬼ごっこだ。それを、攻守を入れ替え制限時間内に何度も行う。競技名にもなっている「カバディ」という言葉は、攻撃側が息継ぎなしで言い続けられる間だけ攻撃が許されるという「タイムリミット」として機能する。ゆえに限られた時間内に狭いコートで攻撃側がどこへ追い込み、守備側がどう回避するかが重要なポイントとなるのだ。

カバディという競技をストレートに取り上げた異色作だ ©武蔵野創

 守備側は仮にタッチされても攻撃側が自陣に戻れなければ得点にならないため、タッチされれば全力で組み伏せようとする。実は速さとパワーの両方が高いレベルで求められる格闘競技なのである。

「やっぱり見た目のインパクトはすごく大きかったですね。漫画もそうですけど、延々とセリフで説明されるよりも、バシッと画で見せた方がいいこともあるじゃないですか。まさにそんな感じで…」(武蔵野さん)

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