「今度電話してきたらぶっ殺す!!」
電話口に出たお客さまは、私がたどたどしく「あの、ご入金のお知らせで……」と言いかけると、いきなり電話口から風が吹いてきそうなものすごい勢いで私を怒鳴りつけた。私は、受話器を持ったまま瞬時に凍りついた。
生まれて初めて受けた恫喝に頭は真っ白になる。それから時間差でものすごい勢いで全身から冷や汗が吹き出した。
「あああ、アノ……」
「テメェ! 今度電話してきたらぶっ殺す!!」
冷や汗で全身びっしょり、息がつまって言葉がカタコトになっている私に向かって、お客さまは捨て台詞を残して電話を叩き切った。
(……な、ななななな、なんだったんだ今の!?)
私の頭はしばらくフリーズしていたが、なんとか我に返ると隣で同じように督促の電話をかけている先輩に泣きついた。
「なんか、いきなり怒鳴られて、こんなヒドイことを言われたんですけど!?」
私はぶるぶると震えながら事の仔細を訴えた。
けれど先輩はダイヤルしかけていた電話機に目を留めたまま「ふぅん、じゃあ言われたことを督促表に書いといて」と言うだけ。
そのクールな目は「ここではそんなこと日常茶飯事なんだよ」と語っているようだった。
(私は、もしかしてとんでもない所に来てしまったんじゃないだろうか……)
冷や汗でふやけた督促表に、私は震える手でお客さまに言われたことを書き残した。
13名のイケニエたち
「どうしよう。こんな“借金の取り立て”みたいな仕事についたなんて、おばあちゃんに言えないよ……」
初日の業務が終わって新入社員が集められた研修室で、隣に座っていた女の子がポツリとつぶやいた。コールセンターでの1日目の業務を終え、私たち新入社員はみごとに全員が打ちのめされていた。
この時コールセンターへ配属されたのは全部で13人。
男性社員が10名と、私を含めた女性社員が3名。この年、新入社員は全部で100人以上入社して、この13人が新入社員人気ワーストNo.1の(こんなに不人気なのは後から知った)コールセンターへと捧げられたイケニエたちだった。