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超氷河期時代の就職

 そもそもなぜ、私たちは督促なんて仕事をすることになったのか。それは言ってしまえば、私たちがとんでもなく、無知で、その上ちょっとだけ不運だったからなのだ。

 唐突だけど、ここで少し自己紹介を。

 私ことN本は現在20代の普通の会社勤めをしているOLです。

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 神奈川県出身。小中学校は家の近所の公立に通い、高校は近所にできたばかりで入試倍率1倍だった私立の女子高へ。運動部に入ったけどなじめず部活はいつのまにか帰宅部。その後1年浪人して、都内にある私立大学へ進学。浪人時代にちょっと上がったけど中学、高校の時の偏差値はずっと50前後だった。つまり私は平均中の平均的な学生だった。

©iStock.com

 でも運悪く、私が就職活動をしていたのは超氷河期と言われる、就職難まっただ中。

 私大文系でとりたてて特技もなく、面接でも上手くしゃべれない私は次々と選考で落とされ続けた。毎日送られてくるお祈りメールに気が狂いそうになっていた大学4年生の夏、やっとのことでこのクレジットカード会社から内定をもらった。

(ああよかった、これでなんとか、社会人になれる!)

 内定をもらった時は、うれしい! というよりほっとした。

 そうしてすがり付くように入った会社ではあったけれど、実は就職活動中なんとか内定が欲しくて、節操なくいろんな業界を受けていた私は、自分が受けていた会社の事業内容なるモノの研究をほとんどしていなかった。

 仕事の内容なんてちょろっとインターネットで調べただけで、内定をもらった後も「入社した後は営業をする支店とかに配属されて、よくわからないけど営業とかさせられるんだろうな!?」くらいに軽く考えていた。

 会社説明会でリクルーターとして来ていた先輩社員はみんな支店でカード営業をしている人たちだった。会社説明会でも就活サイトでも「督促」の文字なんてカケラも登場せず、説明会でもらったパンフレットに書かれているのはかろうじて「債権回収部門」があるという小さな文字だけ。入社してすぐ、私はこう思った。

「だまされた!」

新入社員は督促はしないって言われてたのに……

 そしてこの時、コールセンターに配属された同期も皆同じことを思っていた。

「こんな仕事聞いてないよな……」

「私、新入社員は督促はしないって言われてたのに……」

 私たちはキレイな言葉を並べられてほいほいと入社したけど、まさかこんな仕事をやることになるなんて想像していなかったのだ。

「社会人になったら華やかにスーツを着て、バリバリとかっこよく営業をするんだ!」

 そう思い込んでいた私たちは、目の前に突然「借金の取り立て」という恐ろしい仕事を突きつけられた。その上いきなり連れていかれたコールセンターで、一日中お客さまに電話で怒鳴られるという洗礼を受けて、私たちの心は、もうぺしゃんこだった。