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2021/01/03

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

 クレジットカードを使って買い物をすると、代金は後から請求されてくる。

 これは買い物の代金をいったんカード会社が立て替えてお店に支払っているからで、カード会社が立て替えた代金は、1カ月から2カ月ほど間をあけてお客さまに請求される。

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 けれど困ったことに、中には支払い日を過ぎても代金を入金してくれないお客さまもいる。そんなお客さまに、電話や手紙で「お支払いをお忘れではございませんか?」と入金のお願いをすることを「督促」と呼ぶ。

 もちろん、督促という仕事をしているのは、私が働くようなクレジットカード会社だけじゃない。

 電気代を払わなかったら電力会社から、水道代を払わなかったら水道局から督促の電話がかかってくる。税金や家賃、奨学金返還の督促を行っているコールセンターも盛況だそうだ。図書館で借りた本を返さなくても図書館で働く人から電話がかかってくる。

「えぐい」と評判のキャッシング回収

 実は、世の中にあるありとあらゆる「後払い」には、必ずその後ろに督促をしている人がいる。私が入社したカード会社の中だけでも色々な種類の督促があった。

 クレジットカード、ショッピングクレジットと言われる高額商品の分割払い(車の購入やエステ代などでローンを組むこと)、それからカードを使ってお金を借りるキャッシング。

 よりにもよって、そんな中で私が配属されたのは、社内でもとくに「えぐい」と評判のキャッシングの回収を行っている部署だった。要するに「借金の取り立て」をしているコールセンターである。

 それがなんで「えぐい」かと言うと、キャッシングのお客さまというのは、それはそれは粒ぞろいの、社内でも問題のあるお客さまだったからだ。

耳をつんざく罵声で脳が凍死……

「うるせぇんだよ馬鹿野郎! ちゃんと支払うっつってんだろ!」

「ひぃっ!」

 コールセンターの片隅に座らされて、黒スーツのコワモテ男性集団に交じって初めての督促の電話をかけた時のことを、私は未だに強烈に覚えている。

 電話口から響いてきたのは、今までの人生の中で一度も聞いたことがないほどの、耳をつんざくような罵声である。