厚労省の厳密な方針が足かせになることも
2009年の失敗から、厚労省は何かを学んだのでしょうか。おそらく何も学んでいないと思います。どうしてかというと、何の反省もしなかったからです。反省がなければ、改善がなされるはずがありません。
おそらく厚労省は、新型コロナワクチンについても厳密な基準を作るでしょう。あまりにも長くて、現実には運用できないような基準を作る。そしてそのために、ワクチンの普及は遅れ、接種率は下がるでしょう。
多くの病院や保健所は、厚労省が決めた方針を一言一句、忠実に守ろうとします。そうしないと、あとで徹底的にいじめられるからです。
新型コロナ第一波のとき、感染者数の報告は遅れ、PCRは効率よく回せませんでした。その原因の多くは、病院や保健所が「厚労省の厳密な方針」に縛られていたことにあります。しかし、非常時には「雑」でいいのです。
これは僕がどんなに一生懸命に訴えたところで、それぞれの医療機関の判断になりますが、すべての医療従事者の目的は「患者さんを救うこと」です。そのための手段の一つが「厚労省の方針」です。新型コロナワクチンの開発後、どのような混乱がやって来るにしても、そこの主客転倒だけはしてはいけません。
二つの道のどちらを行くか
新型コロナワクチンは開発されたけれど、発症も重症化もゼロにはできず、決定的な治療薬も開発されない。あるいはエイズと同じように、ワクチンも治療薬も開発されないまま何10年もの歳月が過ぎていくそのような「未来」においては、医療のあり方はドラスティックに変わらざるをえません。
ここ10年あまり、日本の医療機関は経済効率を上げることをひたすら追求してきました。ベッドの稼働率をかぎりなく100パーセントに近づけ、医療従事者はいつも忙しく働いていて、病院は常に患者で溢れている状態。これが経済効率のいい医療の姿です。