文春オンライン

特集観る将棋、読む将棋

藤井聡太の「三冠」は実現する? 2021年の将棋界で注目される3つのポイント

藤井聡太の「三冠」は実現する? 2021年の将棋界で注目される3つのポイント

2021/01/03
note

 無論、藤井が逆の3分の1側に入らないということではなく、むしろ入るほうが期待値としては高そうな気がするが、初の防衛戦というのは初挑戦とはまた違った、本人にしかわからない重圧というものがあるのではないだろうか。

「4年連続の勝率8割」をシミュレートすると……

 そもそも挑戦者が誰になるかもまだまだの状況で、防衛戦のことを考えても仕方がない。近くに実現するかどうかという記録では、「4年連続の勝率8割」に注目が集まるだろう。

 自身の「3年連続勝率8割」が新記録だったわけだが、それを更新できるかどうか。2020年12月31日時点での、藤井の年度成績は34勝8敗、勝率0.810だ。そして年度末の3月31日までどのような対局がつくかをシミュレートしてみる。

ADVERTISEMENT

・竜王戦、2組ランキング戦が1~2局
・順位戦、B級2組が残り3局。
・叡王戦、段位別予選を1局。
・朝日杯将棋オープン戦、本戦を最大4局。
(これ以外の棋戦は年度内に対局がつかないと推測される)

 そして仮に各棋戦で昨年同様の成績だとすると、竜王戦が2勝0敗、順位戦が3勝0敗、叡王戦が0勝1敗、朝日杯が2勝1敗の計7勝2敗となる。合計では41勝10敗、勝率0.804と4年連続の8割を達成することになる。

 このように書くと案外楽に届きそうにも思えるが、残る対局で2敗しかできないのはキツイ。3敗して年度敗戦が11となると、8割のためには44勝が必要になるが、そこまで対局がつかないからだ。

 またトーナメントの朝日杯で早々に負けると、勝ち星が稼げなくなるため黄色信号がつくが、その2回戦では豊島竜王と当たる可能性がある。これまで藤井が公式戦で一度も勝てていない強敵だ。

 結局のところ、すべての対局を勝つくらいでないと達成できないのが、年度勝率8割という数字なのである。これは筆者の主観だが、過去の8割達成者は「8割も勝っているのか」ではなく「あれだけ勝っても8割なのか」と思われていたような気がする。

西山は昇段を狙える位置につけている

 現在、女性の奨励会三段は2名いる。西山朋佳三段と中七海三段だ。三段リーグは四段昇段への最後の登竜門。もちろん、それを超えるのは並大抵のことではないが、史上初となる女性のプロ四段誕生も現実味を帯びたところまできていると言える。

最終日に2勝したものの、14勝4敗で惜しくも「次点」に終わった西山朋佳三段 提供:日本将棋連盟

 事実、西山は第66回三段リーグで14勝4敗の好成績を上げて、次点を獲得した。現在進行中の第68回リーグでも、中は苦しい成績だが、西山は昇段を狙える位置につけている。年齢制限の足音が迫る中での重圧は想像もつかないが、是非とも快挙を実現して欲しいと思うし、西山より年少の中も、初の三段リーグを経験したことで、来期につながる何かを見つけてくれればと思う。

 昨年の西山は自身が参加したプロ公式戦でも結果を残していた。竜王戦6組ではベスト4まで勝ち上がり、史上初となるプロ棋士以外の5組昇級まであと一歩だった。ヒューリック杯棋聖戦では1次予選を突破して、2次予選であと2勝すれば本戦進出という状況だ。実力としてはプロ棋士とまったく遜色はない。