昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

特集観る将棋、読む将棋

退会時には藤井聡太二冠が涙を流して…同門の“兄弟子”が東大に現役合格するまで

東大将棋部物語 #3

2020/12/22

 2020年の東大将棋部主将を務める伊藤蓮矢さんは、杉本昌隆八段門下で3年半奨励会に在籍していた。伊藤さんの奨励会時代と東大に合格するまでの経緯、弟弟子だった3歳年下の藤井聡太二冠について話を聞いてみた。(全6回の3回目、#4へ続く)

藤井聡太二冠の兄弟子だった伊藤蓮矢さん

◆ ◆ ◆

東大将棋部、期待の新入生として

「奨励会にいたことがあり、プロ入り1週間前の藤井六段に勝ったことがあります」。2018年春、東京大学文科3類に入学し、将棋部の新入生歓迎食事会に参加した伊藤蓮矢さんは、こんな自己紹介をした。「マジで」「おおー」。先輩たちはどよめき、伊藤さんは期待の新入生として迎えられた。

「奨励会退会1年後の夏休みに、杉本門下の研究会に声をかけてもらって参加しました。自分が高2、藤井二冠が中2で四段に昇段する直前のことです。アマ大会にはよく出ていましたが、退会後に門下の研究会にお邪魔するのは普通ないことで、その1回だけです。和気あいあいとした雰囲気で藤井二冠もそんなに真剣ではなく、勝ったのもたまたまなのですが、ウケが良いかなと自己紹介で話してしまいました」と伊藤さんは笑う。

グランドチャンピオン戦で優勝も

 伊藤さんは三重県伊勢市で育ち、藤井二冠の3学年上。藤井二冠同様に、東海地方を代表する強豪小学生として有名だった。

 藤井二冠はJTプロ公式戦と同時開催され、全国の主要都市11か所で行われる子ども大会の東海大会の低学年の部で小2のとき準優勝(決勝で角をタダで取られるミスをして泣きじゃくる映像が話題になった)、小3で優勝を飾ったことは有名だ。同時期同大会の高学年の部で小5、小6と連続優勝したのが伊藤さんだ。小6のときの準決勝では、小4だった中西悠真さん(現奨励会三段)相手に負けに近い局面まで追い込まれながら、得意の終盤で大逆転し、時間が切れる直前に勝ったこともある。

伊藤さんが小6で子ども大会東海大会(名古屋)にて優勝したとき。決勝ステージに上がるために和服を着たところ(伊藤さん提供)

 東京で行われた全国大会でも活躍した。藤井二冠が3年生の部で伊藤匠四段に準決勝で敗れて大泣きしたエピソードで知られる第9回小学館学年誌杯争奪全国小学生将棋大会では、6年生の部を勝ち抜きグランドチャンピオン戦(各学年の上位2名が進出するトーナメント)で優勝し、1メートル近い大きなトロフィーと五寸盤を獲得した。グランドチャンピオンのトーナメント表には、3年生だった伊藤匠四段や、5年生だった入馬尚輝奨励会三段の名前の他、今は東大将棋部の後輩となった当時5年生の名前もある。