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「ひとりで死んでも“孤独死”ではない」上野千鶴子が“幸せな最期”について主張し続ける理由とは?

『在宅ひとり死のススメ』より #1

2021/01/20

source : 文春新書

genre : ライフ, ライフスタイル, ヘルス, 医療, 読書

 2007年時点で15.7%だった高齢者の独居世帯率が、2019年にはなんと27%に急増。高齢独居世帯予備軍である、高齢者のみの夫婦世帯率33%を合わせると「おひとりさま」で最期を迎える可能性のある世帯は全体の60%にまでのぼっている。

 ここでは、10年以上にわたっておひとりさまで過ごす老後生活の素晴らしさを説く社会学者の上野千鶴子氏による新著『在宅ひとり死のススメ』を引用。在宅で最期を迎える幸福について紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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ひとり静かに死んでいくことを「孤独死」と呼ばれたくない

 わたしには家族がいませんので、基本、ひとりで暮らしています。高齢者の仲間入りをしましたが、まだ春日キスヨさんのいう「ヨタヘロ期」には至っていません。「フレイル(虚弱)などという横文字を使われるより、「ヨタヘロ」の方がずっとわかりやすいですね。

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 そのうち要介護認定を受けて介護保険の利用者になるだろうと思います。たくさんのお年寄りを見てきて、PPK(ピンピンコロリ)など望むべくもなく、なかなか死にきれない下り坂を、ひとはゆっくり下っていくものだと認識しました。そのうち動けなくなり、食べられなくなり、飲めなくなり……そしてある日呼吸が止まる、それを臨終と言うのだと教わりました。ひとり暮らしのわたしが、ひとり暮らしのまま下り坂を下っていって、ある日ひとり暮らしのまま在宅で死ねないだろうか……そう思いました。ひとりの暮らしを過ごしているわたしの臨終の場にだけ、ふだんめったに会わない一族郎党・親類縁者が全員集合するのも、妙なものです。ひとり静かに死んで、ある日亡くなっているのを発見されたら、それを「孤独死」とは呼ばれたくない。それが本書の執筆動機です。