ーーとはいえ、チーム内では年長者の方に入りますし、周りも松田さんの言動を重んじますよね。
そうですね。だから、軽はずみな発言はしないようにしています。僕が若いときもそうだったんですが、チームの上の人がぼそっと言ったことで、意外とグサっとくることがたくさんあるんです。「本当お前ダメだな」って言われれば「まじでダメなのかな…」とか、「ほんま打てないな」って言われたら「打てないのかな…」とか。
親しくなるほど、つい言ってしまいがちだけど、その一言が選手をダメにする重りになってしまうかもしれない。何かを言ったり、アドバイスをするのは監督やコーチの仕事。ベテランだから何を発言してもいいわけじゃない。それよりも監督やコーチにはできない、若い選手が野球をやりやすい環境づくりこそがベテランの仕事だと思っています。
そして若い選手は若い選手なりにそこから自分で感じて、自分で力をつけて、自分で結果を出して上がっていけばいい。普通の会社と野球とは少し違うフィールドではあるけれど、そういう部分は一緒なのかなとも思います。
チームで一番声も出して、しっかり成績も残す
ーーベンチで誰よりも声を出しているのも、環境づくりの一環ということですか?
というか、そもそもベテランだから声を出さない、若手だから声を出すというのはおかしな話じゃないですか? スポーツ界の昔からのしきたりだからって、そんな馬鹿な話はないですよ。
強い、弱い関係なく、同じチームにいるのならみんなで同じ気持ちになってプレーをするべきなんです。小中高、大学、社会人はもちろんですが、日本野球界のトップであるプロ野球選手こそ、ベテランがみんなの手本になるように率先して声を出していくべきです。
ーーそう思っていても実行するのはなかなか大変ですよね。
成績を上げて、声もチームのムードも上げて…となると、正直年々、きつくなってきます(笑)。ただ、野球だけをやっていたら37歳の今まで、僕はプレーしてこられなかったと思うんです。チームで一番声も出して、しっかり成績も残す――そんな風に自分で自分にプレッシャーをかけることで成長できた部分もあるのかなと。
逆に、チームとしてもいつまで僕に頼っているんだという思いもあります。まだ引退する気は全くありませんが、あと10年現役とはいかないと思っています。ただ、川崎さんから受け継いだバトンを渡せる選手は、今のところまだ出てきていません。
だからこそ、まだまだ僕が高い壁となってプレーをして、同時にチーム全体を盛り上げる姿を見せて、僕がいなくなったときに「誰がやるんだ」というのに気づいて欲しいと思っています。