写真を通じて「世の中の見方」を考える
そこに気づいてから恵納教諭は、生徒に対して「これを撮れ」という指導は絶対にしないようにしたという。
「世の中にいろんなものがあるでしょう。その中から何を選ぶかも含めて、見方はその人なりに違う。部活動での写真って、その見方を考えるのが大事だと思うんです。だから、そこに意見をすることは絶対ないです。それができるようになってからが始まりなんで」
例として恵納教諭が挙げてくれたのが、地元・田辺市の事情だ。
「この辺りは急速に過疎化が進んでいて、あと20年後にはこの高校もないかもしれないんです。そういう情報は生徒もみんな知っているし、授業でもやる。でも、それって知識であって肌感覚ではないんです。実際に街に写真を撮りに行けば、『こんなにお爺ちゃん、お婆ちゃんばっかりなんや』というのも分かるし、そこから自分が伝えたい“過疎の現実”みたいなものも見える。それは現地に行ってみて、撮ってみないとわからないし、実際の現実から何を受け取るかは人それぞれですからね」
そうして3年後の2017年、ついに神島高校は写真甲子園で全国の頂点に立った。そこからは、「運よく」連覇を続けているという。
写真部員が最初にぶつかる「壁」
現在は部員が1、2年生合わせて20人ほど。火曜日と木曜日にミーティングと撮影の時間を設け、あとの曜日は基本的に個々人で撮影や撮った写真のセレクトをする。写真の講評は、部のLINEグループで行うのだそうだ。
多くの新入部員が最初にぶつかる大きな壁が「何を撮るのか」ということだという。
「さっきも言いましたけど、一番大事なのは『撮る側が何を相手に伝えたいか』ということなんです。言い換えれば、『写真を通じて、世界とどうつながるか』を考えることでもある。それが分かれば撮るものも自然と決まる。でも、それが難しい。最初は『何撮っていいか分からん』というのは、よく生徒言いますよ。ヒマワリを、真ん中にドンっておいてあるだけの写真がしばらく続くなんてこともある。で、ボロクソに言いますけど(笑)」